
1人2台運用で実現する多品種少量生産|NCフライスとマシニングの戦略的使い分け【株式会社大和精密製作所】
製造業の廃業が加速する中、「単品・小ロット」という難易度の高い領域で、50年以上堅実に歩み続けている株式会社大和精密製作所。
主要取引先3社で売上の8〜9割を占めながらも、扱う図面は月800枚、そのうち8割が1〜2個の単品加工。納期は短納期案件が7割を占め、「明日までに」という依頼も対応されます。
この企業の生産体制の核心は、「1人2台運用(マシニング1台+フライス1台)」にあります。マシニングセンタで長時間加工を回している間に、NCフライスで緊急の単品を仕上げる。この使い分けにより、「止まっている機械をなくす」ことを実現しています。
今回、塩田社長と井藤工場長にお話を伺う中で見えてきたのは、多品種少量生産で生き残るための実践的なノウハウでした。
この記事の目次[非表示]
1. 緊急案件への対応力が生き残りの鍵
「1個から」「明日までに」を断らない
「在庫を持たないお客様が増え、在庫切れや設備故障の緊急品が増えています。弊社は緊急でも受けます」
この言葉が示すように、大和精密製作所の特徴は緊急案件への対応力にあります。
取扱案件の特徴:
- 月間図面枚数:繁忙期で1000枚以上(協力会社を含む)
- 1〜2個の単品案件:全体の約8割
- 「大量」でも10個程度(20〜30個あれば多い方)
- 約7割が1カ月以内の短納期案件
一般的な製造業では敬遠されがちな「1個だけ」「明日までに」という案件。しかし、大和精密製作所はこれを断りません。メインは生産設備向けの機械部品の加工で、主要3社からの受注が売上の8〜9割を占めますが、創業以来一貫して「多品種・小ロット」に特化してきました。
緊急案件が入った時、どう対応するのか、答えはシンプルです。
「例えば主要取引先から緊急依頼が来たら、優先してそれをやります。その際『別件は少し遅れます』と正直に伝えると、『後でいいよ』と返していただけることが多いです」
これは単なる顧客の善意ではありません。長年の信頼関係があってこそ成立する対応です。そして、この対応力を支えているのが、少人数体制だからこその機動力です。
現場を支えるのは加工者7人と検査1人の少人数体制です。各自が引き出しから図面を取り出し、納期を見ながら「今日はこれ、明日はこれ」と自律的に判断して加工を進めます。工場長は全体の流れを把握しながら優先順位や進捗をチェック。人数が少ないからこそ「目が行き届く」「すぐに調整できる」という機動力が、緊急案件への柔軟な対応を可能にしています。
廃業が進む業界で生き残る理由
「過去に価格を大きく下げて受け続けた結果、廃業に至ったケースもあります」
量産案件を安値で受注し続けた結果、設備更新も人材採用もできなくなる。この悪循環に陥った企業が、市場から退出していくのです。協力会社の廃業も深刻で、特にコロナ以降、数社廃業しました。
大和精密製作所が価格競争に巻き込まれない理由は、緊急案件への対応力にあります。設備故障や在庫切れによる緊急品は、価格よりも「すぐに対応できるか」が評価される領域です。
さらに重要なのは、協力会社ネットワークを活用した一貫体制です。30〜40社との取引でリスク分散を図りながら、機械加工にとどまらず板金・溶接といった工程も含めて対応します。
常時やり取りする協力会社には、仕事が少ない時でも一定の案件を出すことで、長期的な関係を維持しています。
図面をもらうだけで材料発注から加工、焼入、研磨、表面処理まで完成品で納品できるため、顧客は図面を渡すだけです。各工程を個別に発注・管理する手間が省けるだけでなく、納期遅延や品質トラブルのリスクも低減できます。
さらに、ベアリング関係などは簡易的な組立まで行い、不具合を事前に発見して納品します。
「特にベアリング関係などは、組んだ方が不具合に気付きやすいので、組立検証まで行うことがあります。実際、図面がおかしかった案件を組立時点で見つけて問い合わせし、助かったと言っていただいたこともあります」
窓口を一本化して完成品で受け取れる体制は、単なる加工業者ではなく「製造パートナー」としての価値提供です。顧客は「製造」という機能を買っているのではなく、「安心」「手間の削減」「問題解決」という価値を買っているのです。
【Point!】緊急対応力が生む競争優位性
多くの製造業が「効率化=量産化」と考えがちですが、量産品は価格競争に巻き込まれます。一方、緊急案件への対応力には本質的な競争優位性があります。
設備故障や在庫切れによる緊急品、試作品、特殊仕様は、価格よりも「対応力」「納期」「品質」が評価される領域です。量産の取引が価格と納期だけで決まりがちなのに対し、単品・小ロット生産では図面にない「暗黙知」の共有、緊急対応での実績の積み重ね、製品開発段階からの技術提案といった関係性が生まれます。
「困ったときはあの会社に」という指名受注が増えるのは、信頼という無形資産の蓄積なのです。この緊急対応力こそが、大和精密製作所が50年間堅実に歩み続けてきた理由であり、少人数体制と1人2台運用がそれを可能にしています。
2. 1人2台運用の核心|NCフライスとマシニングの戦略的使い分け
「止まっている機械をなくす」ための最適解
「弊社のやり方だと、1人2台(マシニング1+フライス1)の組み合わせが最も効率的です」
井藤工場長が語る、少人数で多品種少量生産を回すための答えは明確です。
まずマシニングセンタに長時間加工の案件をセットし、自動運転に入ったらNCフライスに移って単品加工を進めます。
さらにNCフライスでの加工中にマシニングの段取り替えを済ませておけば、機械が止まっている時間を最小限に抑えられます。
「『止まっている機械をなくす』こと。1人2台持ち(理想はマシニングを回しながらフライスで別品を進める)で、機械が動いている間に他方を段取り・加工します」
ただし、1人2台運用を成立させるには、スケジュール管理と段取りの工夫が欠かせません。納期を見ながら、似たような大きさや形状の品物をまとめて段取りするなど「前段取り」が重要です。品物の順番を考えながら、次に何を加工するかを判断する——この一連の流れが、機械を止めずに回し続ける鍵となります。
使い分けの基準
「緊急の単品・小ロットは山崎技研のNCフライスが非常に強いです」
多くの企業が「加工時間の短縮」に注目しますが、実は単品・小ロット生産では「段取り時間」こそが重要です。
NCフライスとマシニングの使い分け基準:
項目 | NCフライス | マシニングセンタ |
用途 | 1〜2個の単品・緊急案件 | 数量のある案件・長時間加工 |
段取り | 図面確認から5〜10分 | プログラム作成〜試運転が必要 |
操作性 | 手動操作で微調整可能 | 自動運転・工具交換 |
「1〜2個の単品は山崎技研さんのNCフライスで、手作業主体でやります。マシニングは工具交換が自動なので、数量のあるものや加工時間が長いもの、切削体積が大きいものに向いています」

段取り時間の差が生む競争優位
「山崎技研のNCフライスなら、図面確認〜プログラム〜削り出し開始まで5〜10分程度でスタートできます」
一方、マシニングセンタの場合:
- プログラム作成に時間がかかる
- 工具長測定などの段取りが必要
- 試運転で動作確認が必要
「マシニング専業の会社は、単品の緊急品を断ることもあると聞きます。弊社は1個から緊急でも受けるので、山崎技研の機械が活躍します」
この段取り時間の差は、受注機会の差に直結します。緊急案件を断らずに受けられる体制は、顧客からの信頼獲得につながり、長期的な取引関係を構築します。
NCフライスならではの「手の感覚」が生む優位性
「Z軸が手動式で、ワークに当たる寸前まで手で持って行けます。刃先の工具長出しをしなくてよく、これが早さの理由の一つです」
NCフライスの強みは、人が加工状態を直接確認しながら作業できる点にあります。マシニングセンタがプログラムに沿って自動で加工を進めるのに対し、NCフライスでは切粉の出方や切削音を確認しながら、その場で調整を加えることができます。
「工具の切れ味を活かすにはやはり手。職人の手の感覚の追求が肝で、切れ味に応じて緩急をつけられます」
ハンドルやレバーから伝わる振動により、切削状態を即座に把握できます。切れ味の良いときはスムーズに進め、抵抗を感じれば油を差して切粉を排出する。この感覚を頼りにした微調整により、単品加工では最適な切削条件を維持できるのです。
【Point!】1人2台運用が成立する条件〜機械の相性と作業者のスキル
1人2台運用は、単に機械を2台並べれば成立するわけではありません。成功の条件は以下の3つです。
第一に、機械の性格が異なること。マシニングセンタは「自動で長時間回す機械」、NCフライスは「人が関与して微調整する機械」。この性格の違いがあるからこそ、マシニングが自動運転している間にNCフライスで別の作業ができるのです。
第二に、段取り時間の差。NCフライスは5〜10分で加工開始できるため、マシニングの加工中に次の仕事を始められます。もし両方とも段取りに30分かかる機械なら、待ち時間が発生してしまいます。
第三に、作業者の多能工化。図面読み、工程設計、加工、仕上げまでを一貫して担当できる人材だからこそ、2台を効率的に使いこなせます。専門特化した作業者では、この運用は困難です。
3. 50年使える機械が教えてくれること
1971年製の機械が現役で動く理由
「その機械は私より年上です」
大和精密製作所には1971年製の山崎技研フライス盤がいまだに稼働しています。創業期に導入した機械が、50年以上経った今も使用可能なのです。
「電気的には簡易的なもので、自動プログラムで動く部分はありません。メインには使いませんが、機械が埋まっている際のサポート用途として今も動かせます」
なぜ50年も使えるのか。
「20〜30年使っても精度が落ちませんし、故障も少ない。修理はボタン交換などの軽微なものくらいで、機械自体の大きな修理はほとんどありません」

精度の維持が最大の価値
50年使える機械の価値は、単なる耐久性だけではありません。最も重要なのは、精度の維持です。
「会長の話では『使いやすさと精度が全然違う』とのことです。会長の周りでも評価が高く、導入が進んだと聞いています」
精度が落ちないということは、再調整や修理のコストが発生しないということです。機械の稼働率が高まり、品質クレームのリスクも低減します。
実際、創業期に導入したもう1台は協力会社に譲渡されていますが、そこでも稼働し続けています。この事実が、山崎技研の機械の耐久性を物語っています。
山崎技研の導入ユーザーの約80%が20年以上使い続けているというデータがあります。
この数字が耐久性と精度維持を裏付けています。長期間使えるということは、設備投資の償却期間が長く取れるだけでなく、作業者が同じ機械で技術を磨き続けられるという人材育成面でのメリットも生まれます。
1人2台運用との相性
「今後も、山崎技研の機械は入れ替えつつ使い続けます」
この方針の背景には、1人2台運用との相性の良さがあります。NCフライスは段取りが早く、手動操作で微調整ができるため、マシニングセンタとの使い分けに最適なのです。
4. 未経験から3年で1人2台を使いこなす人材育成
多能工化を前提とした教育体制
1人2台運用を実現するには、作業者の多能工化が不可欠です。大和精密製作所では、未経験者を独自の教育プログラムで育成しています。
育成ステップ(3年で一人前):
第1期(最初の半年):基礎理解
- 完成品と図面を見ながら「図面の見方」を学ぶ
- 完成品と図面の対応関係を理解
- バリ取りやヤスリがけで加工の全体像を掴む
第2期(次の半年):機械操作の習得
- 実機での操作練習
- 基本的な加工プロセスの実行
- 安全作業の徹底
第3期(1年目以降):工程設計能力の獲得
- 図面を渡し「材料からどの順番で削るか」を自分で考える
- 多面加工の段取り順序を判断
- 治具の工夫や押さえ・締め付けの判断
「機械操作そのものより、図面を見て加工順序を組み立てる判断力の方が難しく、経験で身につけてもらいます。最終的に『一人前』としての感覚を持つまでは3年程度を見ています」
「失敗から学ぶ」教育方針
特徴的なのは、失敗を許容する教育方針です。
「まず自分で考えさせ、聞いてきたら複数のやり方を示し、実際に試させます。その上で『掴めない』などを体感してから、より効率的なやり方を教えます」
最初から答えを教えるのではなく、失敗込みで経験させる。もちろん、安全には最大限の配慮をします。
「危険なやり方は事前に注意喚起し、事故防止を最優先します」
この教育方針を支えるのが、山崎技研NCフライスの「教えやすさ」です。
「入力が直感的で分かりやすいです。どう動くか、どう加工するかの指示が入れやすく、教えやすい。操作の習得は数ヶ月、半年もかからないことがほとんどです」
ベテランと若手で分かれる機械への好み
興味深いのは、世代によって機械への好みが分かれる点です。
「ベテランは『自分の手の感覚で削れる』山崎技研のNCフライスの方が安心で、達成感もあります。Z軸を自分の手で送るので、切粉の出方に合わせて送りを上げたり下げたりでき、工具消耗の感覚が分かります。微妙な異常にもすぐ気付けます」
「マシニングは扉が閉まり、油で見えにくく、扉を開けるまで削りの様子が分からないのが不安だと感じる人もいます」
一方、若手はこう感じます。
「若手になると最初からマシニングも併用しているため『自動で楽にできる方がいい』と感じる者もいます。Z軸の手送りを『しんどい』と言うこともあります」
しかし、使い分けの原則は明確です。
「どちらが速いかと言えば、単品は山崎技研の方が総合的に早く、数があるならマシニングが早い、という棲み分けです」
【Point!】人材育成と生産性向上は両立できるのか
製造業における最大のジレンマは、「即戦力がほしい」と言いながら「育成する時間がない」という状況です。
しかし、大和精密製作所は明確に「育成」を選択しています。未経験者を採用し、3年かけて一人前に育てる。この選択ができるのは、教育しやすい設備(山崎技研NCフライス)、失敗を許容する文化、そして長期的視点での経営判断があるからです。
重要なのは、「操作の習得」と「判断力の獲得」を分けて考えることです。機械操作は数ヶ月で習得できますが、加工順序の判断、治具の工夫、品質の見極めには経験が必要です。
操作がシンプルな機械を選ぶことで、育成期間の前半を短縮し、後半の「判断力獲得」に時間を使える。そして、1人2台を使いこなせる多能工を育成する。これが効率的な人材育成の秘訣です。
5. まとめ:1人2台運用で実現する多品種少量生産の成功条件
50年以上、単品・小ロット生産に特化し続けてきた株式会社大和精密製作所様の事例から、生き残るための本質的な条件が見えてきます。
1. NCフライスとマシニングの戦略的使い分け
加工時間はどの機械も大差ありません。差が出るのは「段取り時間」です。
使い分けの基準:
- 単品・緊急(1〜2個)→NCフライス(段取り5〜10分)
- 数量あり・長時間加工→マシニング(自動運転、効率重視)
- 1人2台運用で機械を止めない
「緊急の単品・小ロットは山崎技研のNCフライスが非常に強い」という言葉が、この使い分けの本質を示しています。
2. 1人2台運用を可能にする設備選定と人材育成
1人2台運用は、設備の性格の違いと作業者の多能工化によって成立します。
成功の条件:
- マシニング:自動で長時間回す機械
- NCフライス:人が関与して微調整する機械
- 作業者:図面読みから工程設計、加工、仕上げまで一貫して担当できる多能工
「弊社のやり方だと、1人2台(マシニング1+フライス1)の組み合わせが最も効率的です」
3. 図面1枚から完成品納品までの一貫体制
下請けからパートナーへ。価値提供の範囲を広げることで、価格競争から脱却できます。
一貫体制の要素:
- 材料手配から完成品納品まで
- 30〜40社の協力会社ネットワーク
- 組立検証による不具合の事前発見
- 適材適所の外注振り分け
「困ったときはあの会社に」という指名受注が生まれるのは、この一貫体制による信頼の積み重ねがあるからです。
4. 今後の展望と変わらない価値
大和精密製作所様では今後、5軸加工機を導入し、工程集約や複雑形状の加工にも挑戦していく考えです。将来的には人材確保の課題もあり、ロボットによる自動化も選択肢から外すことはできません。ただし、同社の仕事は単品・小ロットが中心で段取り替えが多く、自動化だけで完結する加工はほとんどありません。だからこそ目指すのは、すべてを自動化で置き換えることではなく、ロボットとNCフライスの手作業を組み合わせた人と機械の協働です。
その協働の中で、山崎技研のNCフライスが果たす役割は大きいと言えます。緊急の単品・小ロットへの対応力はもちろん、直感的な操作性は新たな人材を受け入れる間口を広げる要素にもなります。自動化が進むほど、人の手と感覚で柔軟に動ける領域の価値は高まります。同社が今後も山崎技研のNCフライスを入れ替えながら使い続けるのは、その強みが自動化時代においても変わらないからこそです。
そしてその強みは、同社が大切にしてきた姿勢そのものにもつながっています。図面にない暗黙知を共有し、緊急時に対応し、問題解決を提案する。1個から、緊急でも受ける。この姿勢と、それを支えるNCフライスとマシニングの1人2台運用という体制こそが、大和精密製作所様が50年間堅実に歩み続けてきた理由です。
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【Profile 】
社名:株式会社大和精密製作所
代表者:代表取締役 塩田 孝一
所在地:〒639-0241 奈良県香芝市高188-2
創業:1971年1月
事業内容:各種治具・工具の製作/各種機械部品の製作/ベアリング等検査測定器の設計・制作/冷間/熱間/温間/鍛造 用金型・工具製作
URL:https://www.yamato-seimitsu.jp/
【Profile 】
社名:株式会社山崎技研
代表者:代表取締役社長 森尾 孝博
所在地:〒782-0010 高知県香美市土佐山田町テクノパーク2番
創業:1948年3月
会社設立:1965年10月
事業内容:工作機械事業部/NCフライス盤の設計開発・製造・販売
水産事業部/マダイ・シマアジ・ブリ等の養殖用稚魚の種苗生産
URL:https://www.yamasakigiken.co.jp/

