
2025年に押さえるべき製造業トレンドキーワード5選
2025年版ものづくり白書(経済産業省・厚生労働省・文部科学省)によれば、製造業の競争力強化において考慮すべき要素として、「産業競争力」「脱炭素」「経済安全保障」の3つが挙げられています。
世界各国で産業政策の展開が加速し、これらの要素を複合的に捉える動きが進む中、日本の製造業もまた大きな転換期を迎えています。
本記事では、白書の分析や各種調査データをもとに、2025年に注目すべき5つのキーワードをピックアップ。それぞれの背景と、2026年以降の展望をまとめました。
ポイントとして、2025年は「準備・検証」の年であり、2026年から「実行・投資」が本格化します。
今から情報をキャッチアップしておくことで、来年以降の対応に影響を与えます。
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ものづくり白書2025が示す製造業の現状
まず、2025年版ものづくり白書から読み取れる、製造業の現状を確認しておきましょう。
2025年版ものづくり白書|20205年5月30日公開.2025年9月18日更新
就業者数と人材不足
製造業の就業者数は、2023年の1,055万人から2024年には1,046万人へと減少しました。中小企業における従業員数過不足DIは2024年にマイナス18.2となり、コロナ前(2019年)と同水準の人手不足状態に戻っています。
企業行動の変化
直近3年間で実施した企業行動では、約9割が「価格転嫁」、約8割が「賃上げ」を実施。また半数以上が「人材確保」「設備投資」に取り組んでいます。事業に影響を及ぼす要因としては「原材料価格の高騰」「エネルギー価格の高騰」「労働力不足」が上位を占めています。
経済安全保障への対応状況
経済安全保障について「聞いたことはあるが、具体的なイメージが分からない」と回答した事業者が約7割。約6割の製造事業者が経済安全保障の取組を実施していないという結果も出ており、DXや環境適合と比較して浸透が遅れています。
1. 製造業DXと生成AI活用
ものづくり白書2025では、DXを「産業競争力の強化に向けて製造事業者の稼ぐ力の向上やGXの推進等に資する重要な取組」と位置づけています。ChatGPTに代表される生成AIの活用も、設計支援、品質検査、技術文書の作成・検索など、製造現場での適用が急速に進んでいます。
2025年に注目される理由
白書によれば、個社単位のデジタル化・効率化は一定の成果が出ている一方、ビジネスモデルの変革等の高度な領域では成果創出が限定的です。
また、グローバルコンサルティング企業マッキンゼーアンドカンパニーによる調査では、製造業における生成AI活用により年間約40兆〜67兆円の付加価値創出が見込まれるとされています。これは製造業全体の収益の約3〜5%に相当する規模であり、AI活用の経済的インパクトの大きさを示しています。
出典:McKinsey & Company 「The economic potential of generative AI: The next productivity frontier」2023年6月
2026年以降の展望
白書では「経営層のコミットメント」の重要性が強調されており、トップダウンでのDX推進が成果創出の鍵とされています。2025年はPoC(実証実験)の年、2026年からは本番運用・全社展開が本格化すると見られています。
現場・購買担当者への影響
特許文献の要約、過去トラブル事例の検索、作業手順書の自動生成など、ホワイトカラー業務の効率化に効果が見込まれます。購買担当者にとっては、仕入先情報の整理やRFQ作成補助など、調達業務の省力化につながる可能性があります。
2. AIロボティクスと協働ロボット
ものづくり白書2025では、「労働力不足の中、生産性や産業競争力の向上に向け、ロボット・AIの開発・活用の推進が重要」と明記されています。特に安全柵なしで人と同じ空間で作業できる「協働ロボット」が、中小製造業で導入しやすい自動化ソリューションとして注目されています。
2025年に注目される理由
白書では「少量多品種生産をはじめとした、高度かつ多様なニーズに対応するためにも、ロボットシステム開発やAIの開発・活用支援を政府としても推進」する方針が示されています。2024年のメーカー出荷台数は前年比約148%と急成長しており、市場拡大が続いています。
2026年以降の展望
2033年には出荷台数が2024年比で約7.4倍に達すると予測されています。白書で言及されている「ロボットのオープンな開発基盤の構築」「ロボティクス分野におけるデータプラットフォームの構築」が進むことで、導入のハードルがさらに下がる見込みです。
現場・購買担当者への影響
組立・検査・ピッキングなど人手に頼っていた作業を、比較的低コスト・短期間で自動化できます。周辺機器やグリッパーなどの関連商材の需要増が見込まれます。
3. GX(グリーントランスフォーメーション)と脱炭素
ものづくり白書2025では、「我が国GDPの約2割を占める製造業は、国内部門別CO2排出量の36%を占める」と指摘。そのうち7割は排出削減が困難な産業であり、「脱炭素と産業競争力強化を同時達成すべき分野」とされています。
2025年に注目される理由
2025年2月に「GX2040ビジョン」が閣議決定され、GXを推進するための見通しや支援策が示されました。白書でも「GXの推進においても、事業者ごと及びサプライチェーン横断でのデータ・デジタル技術活用が重要」と強調されており、DXとGXの一体推進が求められています。
2026年以降の展望
【重要】排出量取引制度は2026年度から本格稼働、炭素に対する賦課金は2028年度から開始予定です。2025年は「準備の最終年」であり、2026年からは排出量削減が経営コストに直結し始めます。
現場・購買担当者への影響
省エネ設備への更新ニーズ、再エネ電力契約への切り替え、CO2排出量の見える化ツールの導入などが進みます。白書で言及されている「ウラノス・エコシステム」など、カーボンフットプリント算出のためのデータ連携基盤への対応も求められるでしょう。
4. 人材育成・技能継承とデジタル活用
ものづくり白書2025では、製造業における人材育成の問題として「6割以上の事業所が指導する人材が不足している」と報告。デジタル技術を活用した技能継承や、リスキリングの推進が重要課題となっています。
2025年に注目される理由
白書によれば、デジタル技術導入のきっかけは、従業員規模が小さい企業では「経営者・役員の発案」が最も多く、大きい企業では「社内からの要望」が最も多いという特徴があります。また、デジタル技術導入時の人材確保では「社内人材の活用・育成」が約6割を占めています。
2026年以降の展望
熟練した作業者の動きをカメラやセンサーでデータとして記録し、デジタルツイン化する技術が実用段階に入っています。白書でも紹介されている「トラの巻」(ベテラン職人のノウハウをデジタル化した技能伝承ツール)のような取り組みが広がる見込みです。
現場・購買担当者への影響
モーションキャプチャ、各種センサー、VR/AR機器、データ収集・分析ツールなどの需要が高まります。「属人化解消」「技能の資産化」をキーワードとなります。
5. リスキリングと次世代人材育成
ものづくり白書2025では、厚生労働省担当パートで「ものづくり人材のリスキリングを含む能力開発の現状」が詳しく分析されています。製造業における正社員へのOFF-JT実施率はコロナ前水準を超える一方、正社員以外は回復していない状況です。
2025年に注目される理由
白書では「人材開発支援助成金」や「生産性向上人材育成支援センター」など、政府の支援制度が紹介されています。特に中小企業に対しては、人材育成に関する相談から職業訓練の実施まで一貫して支援する体制が整備されています。
2026年以降の展望
文部科学省担当パートでは「数理・データサイエンス・AI教育の推進」「半導体人材の育成」「マイスター・ハイスクール」など、次世代を担う人材育成の取り組みが紹介されています。
2028年には技能五輪国際大会が愛知で開催予定であり、ものづくり人材育成への注目がさらに高まります。
現場・購買担当者への影響
社内研修用のデジタル教材、eラーニングシステム、シミュレーション訓練機器などの需要が高まります。「人材開発支援助成金」の活用を前提とした提案も効果的です。
まとめ:白書が示す「3つの要素」を意識した対応を
ものづくり白書2025が示すように、製造業の競争力強化には「産業競争力」「脱炭素」「経済安全保障」の3要素を複合的に捉えることが重要です。
DXは単なる効率化ツールではなく、GXの推進やサプライチェーン強靭化にも資する基盤技術として位置づけられています。また、人材育成・技能継承においてもデジタル技術の活用が不可欠となっています。
キーワード別 2026年以降の展望
キーワード | 2025年の位置づけ | 2026年以降の展開 |
製造業DX・生成AI | PoC・経営層コミット | 本番運用・全社展開へ |
AIロボティクス | 中小企業への普及開始 | オープン基盤で導入加速 |
GX・脱炭素 | 準備の最終年 | 2026年から排出量取引本格稼働 |
人材育成・技能継承 | デジタル活用実証 | 技能のデジタル資産化が標準に |
リスキリング | 支援制度活用拡大 | 2028年技能五輪愛知開催 |
白書でも指摘されているように、2025年は「様子見」で終わらせるのではなく、情報収集と準備を進める年です。特にGX(カーボンプライシング)や経済安全保障への対応は、遅れが直接的なコスト増や競争力低下につながります。

