
【2026年4月】 省エネ投資促進補助金 ❘ 令和8年度の制度概要・変更点と申請要件を解説
製造業の設備投資を検討するなかで、「省エネ補助金が使えるらしい」と耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。正式には「省エネルギー投資促進補助金」と呼ばれるこの制度、実は他の補助金と比べてかなり使い勝手のよい仕組みになっています。
賃上げ要件がない、申請から発注までが早い、中小企業から大企業まで幅広く申請できるこうした特徴を持ちながら、補助率は最大2/3、上限額は最大15億円と、規模感も申し分ありません。本記事では令和8年度の最新情報をもとに、制度の全体像と今年度の変更点を整理します。
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省エネ投資促進補助金の特徴
省エネ補助金が他の補助金と大きく異なるのは、賃上げ要件がないという点です。設備更新を通じて省エネを実現することが申請要件であり、採択後に賃上げの実績を求められることもありません。
また申請から発注までのスピード感も見逃せないポイントです。一般的な補助金では交付申請の手続きを挟むため、申請から発注まで5〜6ヶ月かかることが珍しくありません。省エネ補助金はこの手続きが不要で、約2ヶ月で採択・発注許可が下ります。
中小企業だけでなく大企業やそのグループ会社まで申請できる対象者の広さも特徴的です。
ただし、対象となるのは既存設備の更新のみです。現在使用中の設備を廃棄・売却したうえで、省エネ性能の高い新しい設備に入れ替える取り組みが求められます。すでに壊れている設備の更新や、他の工場への移設は対象になりません。
工場・事業場型(I型)の特徴
工場・事業場型は、工場全体で省エネを図るような比較的大規模な設備更新に向いた枠です。
上限金額は15億円と非常に大きく、最大4年間の投資計画をまとめて1回の申請に盛り込むことができます。たとえば1年目に工作機械2台、2年目に3台、3年目に4台といった段階的な更新計画でも対応可能です。
対象経費には設計費、工事費、設備費が含まれるため、オーダーメイドの設備や、キュービクルの更新のように工事費の比重が大きい案件にも活用できます。
補助率は導入する設備の種類によって異なります。SIIが指定する先進設備への更新であれば、中小企業は2/3、大企業でも1/2まで獲得可能です。一般枠(指定設備やオーダーメイド設備)の場合は中小企業1/2、大企業1/3となります。昨今の補助金制度では補助率1/3や1/4となるものも増えている中で、この水準はかなり手厚いといえます。
省エネ要件
工場・事業場型では、以下の3つの要件のうちいずれか1つを満たす必要があります。
省エネ率
工場全体のエネルギー使用量(電気・ガス・重油等を原油換算)を10%以上削減する計画であること。工作機械1〜2台の更新だけでは達成が難しいため、空調やコンプレッサー、照明といったユーティリティ設備との組み合わせが現実的なアプローチになります。
省エネ量
原油換算で700kl以上のエネルギー削減量を見込む計画。工業炉の更新など、大幅にエネルギー使用量が削減される事業者向けの要件です。
エネルギー原単位改善率
エネルギー使用量自体は増えても構いません。それ以上に生産量が増え、製品1個あたりのエネルギー使用量が7%以上下がる計画であれば申請できます。設備更新による自動化で夜間稼働が可能になるなど、生産性が大きく向上するケースに適した要件です。
ここで重要なのが中小企業投資促進枠の存在です。中小企業であれば省エネ率は7%以上、省エネ量は500kl以上、原単位改善率は5%以上に緩和されます。「10%はハードルが高い」と感じる方も、この緩和枠であれば手が届くケースは少なくないでしょう。
採択率と予算
工場・事業場型の採択率は全体的に高い水準を維持しています。令和7年度の1次公募では88.5%(243件中215件採択)、2次公募でも84.2%(265件中223件採択)という実績でした。これは省エネ要件のハードルが高いぶん、申請数自体が限られているためでもあります。
実際、令和6年度には2,000億円以上の予算に対して採択金額の総額は約700億円にとどまっており、予算が大幅に余っている状況です。裏を返せば、要件さえ満たせれば採択の可能性はかなり高いということです。
設備単位型(III型)の特徴
設備単位型は、1台〜数台の設備更新に適した枠です。工場全体での省エネ計画を立てる必要がなく、設備単位での省エネ性能で評価されます。
補助率は企業規模を問わず1/3、上限金額は1億円(事業所単位でカウント)。対象経費は設備費(本体価格)のみで、オプション費用や撤去・設置工事費は含まれません。事業実施期間は最大1.5年間です。
対象設備には生産設備(工作機械、プレス機械、プラスチック加工機、印刷機械、ダイカストマシンなど)のほか、ユーティリティ設備(高効率空調、コンプレッサー、ボイラー、ヒートポンプ、変圧器、LED照明など)も含まれます。
省エネ率の要件と実態
申請に必要な省エネ率の最低ラインは10%以上ですが、よくある誤解として「10%を超えていれば大丈夫」と考えてしまうケースがあります。実際に採択を目指すのであれば、30〜40%程度の省エネ率は出しておきたいところです。このギャップを理解しているかどうかで、申請の準備方針はまったく変わってきます。
省エネ率を高く出すための計算方法や設備選定戦略については、下記記事で詳しく解説しています。
内部リンク<省エネ補助金で採択されるには?省エネ率の計算方法と申請の実務ポイント>
令和7年度の採択率推移
設備単位型の採択率は年度・公募回によって変動があります。令和5年度は1次公募68.1%、2次公募93.4%でしたが、令和6年度は申請件数が急増したことで1次公募59.8%、2次公募56.1%まで低下しました。令和7年度は省エネ要件が追加されたことで申請件数が減少し、1次公募70.1%、2次公募85.8%と持ち直しています。
令和8年度は予算が半減する見込みのため、再び競争率が上がる可能性が高い点は認識しておく必要があるでしょう。
【新設】メーカー強化枠・トップ性能枠(GX類型)とは
令和8年度から新たに設けられる見込みなのが、GXリーグへの参加などGX要件を満たしたメーカーの製品を対象とした新枠です。大きく「メーカー強化枠」と「トップ性能枠」の2つがあります。
メーカー強化枠
GX要件を満たしたメーカーが製造する現行III型の補助対象設備への更新が対象で、補助率は1/3、上限は3億円。予算規模は約250億円と、従来の設備単位型(約100億円)を大きく上回ります。
トップ性能枠
大きな省エネ性能が期待され、かつ普及率が低いと第三者委員会が認めた設備が対象です。補助率は更新で1/2、新設で1/5。ただし、工作機械は対象外となる可能性が高い点は注意が必要です。
現時点でGXリーグに参画しているメーカーは限られており、未参画メーカーも準備を進めている状況です。1次公募に間に合うかどうかは不透明な部分もあるため、まずは通常の設備単位型での申請を軸に検討し、メーカー強化枠は状況を見ながら判断するのが現実的でしょう。
令和8年度の主な変更点と予算動向
令和8年度で特に注目すべき変更点を整理しておきます。
工場・事業場型は予算が2,025億円から2,275億円に増額されます。もともと予算消化率が低い枠ですので、要件を満たせる企業にとっては引き続き狙い目の枠です。
一方、設備単位型は予算が350億円から約175億円へ半減する見込みです。これは競争率の大幅な上昇を意味します。これまで以上に高い省エネ率を出す必要があり、独自計算での申請がより重要になってきます。
メーカー強化枠等の新設も大きなトピックです。GX要件を満たしたメーカーの製品への更新であれば、上限3億円と従来の設備単位型より有利な条件で申請できる可能性があります。
申請スケジュールと手続きの流れ
令和8年度の1次公募は3月30日に開始、締切は4月末の見込みです。審査には約1.5〜2ヶ月かかり、6月上旬〜中旬に採択結果が発表されます。交付申請手続きが不要なため、採択後すぐに発注が可能です。
2次公募は6月末頃に締切、3次公募は申請された案件から順次審査が行われる形式となる見込みです。回を重ねるごとに予算は減っていくため、1次公募での申請が最も有利です。
<!-- 画像挿入候補⑥:1次〜3次公募のスケジュール表。申請期間・審査・事業実施の時期を示すガントチャート形式。PDF p.23のスケジュール表をベースに自社で作成することを推奨 -->
設備単位型で単年度申請の場合、2027年1月末までに支払った経費が対象となります。それを超える場合は複数年度申請(2028年1月末まで)となりますが、単年度申請のほうが予算配分が大きく、採択率も高い傾向にあります。
報告手続き
採択後の報告は大きく2つあります。実績報告は設備導入後1〜2ヶ月以内に行うもので、1ヶ月程度の実測エネルギー量と生産量データを提出します。これが完了すると約3ヶ月後に補助金が入金されます。
その翌年度から始まるのが成果報告です。4月〜3月の1年分について、事業場全体のエネルギー量、導入設備の実測エネルギー量、生産量を報告する必要があります。こちらは5年間の猶予があり、その間に1度でも計画値を達成できれば補助金の返還は求められません。達成できなかった場合は翌年度に改めて実測・報告を行います。
対象となる事業者の範囲
省エネ補助金の申請対象は幅広く設定されています。
中小企業(製造業の場合、資本金3億円以下または従業員300名以下)はもちろん、個人事業主、中小企業団体(信用協同組合、協同組合連合会、企業組合等)、医療法人やNPO法人なども申請可能です。
実はよく見落とされがちなのですが、みなし大企業も申請できます。みなし大企業とは、中小企業に該当する規模であっても、資本金5億円以上の法人が直接または間接に100%の株式を保有する企業のことです。他の補助金では「申請できそうでできない」と困るケースが多いみなし大企業にとって、これは見逃せないポイントです。
大企業については、省エネ法の事業者クラス分け評価制度でSクラスまたはAクラスに該当する企業のみが対象です。
よくある質問(FAQ)
Q.省エネ投資促進補助金に賃上げ要件はありますか?
ありません。省エネ補助金の申請要件は省エネ効果の高い設備への更新であり、賃上げに関する条件は設定されていません。採択後の報告でも賃上げ実績は問われないため、この点を不安に感じる必要はないでしょう。
Q.工場・事業場型と設備単位型はどう使い分ければよいですか?
複数台の設備更新など大規模な投資計画であれば工場・事業場型、1〜2台の更新であれば設備単位型が基本的な使い分けになります。工場・事業場型は省エネ要件のハードルが高い一方、予算規模が2,275億円と非常に大きく採択率も高いため、要件を満たせる見込みがあればまずこちらを検討するのがよいでしょう。
Q.大企業やみなし大企業でも申請できますか?
大企業は省エネ法の事業者クラス分け評価制度でSクラスまたはAクラスに該当する場合に申請可能です。みなし大企業(資本金5億円以上の法人が100%保有する中小企業規模の企業)も申請が認められており、他の補助金制度で対象外となりやすいみなし大企業にとっては貴重な選択肢といえます。
Q.設備の新設や増設は対象になりますか?
対象外です。省エネ補助金は既存設備を廃棄・売却して新しい設備に更新する取り組みのみが対象です。何かしらの既存設備を処分することが前提となります。
まとめ:自社に合った枠の選び方
省エネ投資促進補助金は、賃上げ要件がなく、申請から発注までのスピードも速い、製造業にとって使い勝手のよい制度です。令和8年度は工場・事業場型の予算が増額される一方、設備単位型は半減する見込みのため、枠選びがこれまで以上に重要になります。
工場全体での省エネ計画が立てられるなら工場・事業場型を、設備単位での更新であれば設備単位型やメーカー強化枠を検討してみてください。いずれの枠でも、採択のカギを握るのは省エネ率をいかに高く出せるかです。具体的な計算方法や設備選定の戦略については、次の記事「省エネ補助金で採択されるには?省エネ率の計算方法と申請の実務ポイント」で詳しく解説します。
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