
【令和8年】エイジフレンドリー補助金|変更点・対象設備・申請の流れを完全解説
製造現場における60歳以上の労働者の割合は年々高まっており、高年齢労働者の労働災害防止は中小製造業にとって避けて通れないテーマとなりつつあります。実際、2024年の休業4日以上の労災死傷者のうち、60歳以上が全体の3割を超えるという状況です。そんな中、厚生労働省が所管する「エイジフレンドリー補助金」は、令和8年度予算が前年度比約25%増の9.5億円に拡充されました。
本記事では、令和8年度に大きく変わった制度のポイントから、対象設備、申請の流れ、注意すべき落とし穴までを整理してお伝えします。
※本記事は、株式会社 補助金ポータルの宮崎氏が登壇した
「エイジフレンドリー補助金 解説セミナー」の内容に基づいて作成しています。
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エイジフレンドリー補助金とは|制度の基本
エイジフレンドリー補助金は、令和2年度から始まった厚生労働省の補助制度です。
高年齢労働者の労働災害防止を目的とした設備改善や、専門家による指導の費用について、その一部が補助されます。
特徴的なのは、「補助金」という名称ながら、要件を満たせば基本的に交付される性質を持つ点です。一般的な補助金は採択審査のハードルが高い一方、エイジフレンドリー補助金は労災保険料を財源とする助成金的な性格も併せ持っており、その中間に位置する制度といえます。ただし申請は予算がなくなり次第受付終了となるため、早めの動きが重要です。
本補助金がまだ認知が広がりきっているとはいえず、60歳以上の労働者を雇用する事業者にとっては検討の余地が大きい制度といえるでしょう。令和8年度の予算は9.5億円。令和7年度の7.6億円から約2億円増額されており、国としても力を入れていきたい領域であることがうかがえます。
令和8年度の主な変更点|3コース体制への再編
令和8年度のエイジフレンドリー補助金は、制度設計に大きな変更が加えられました。ここが今回の最大の注目ポイントといえるでしょう。
コース構成が4コース→3コースに再編
令和7年度までは以下の4コースが設けられていました。
- 総合対策コース
- 職場環境改善コース
- 転倒防止・腰痛予防のための運動指導コース
- コラボヘルスコース
令和8年度では、このうち上3つが「専門家総合対策コース」として整理・統合され、新たに「熱中症対策コース」が独立コースとして新設されました。コラボヘルスコースは継続。結果として3コース体制への再編です。
注目すべきは、熱中症対策コースの新設です。令和7年度までは職場環境改善コース内の「熱中症予防対策プラン」として位置づけられていた領域が、独立コースに格上げされました。気候変動の影響もあり、屋外作業や暑熱作業における労働災害防止の重要性が高まっていることが背景にあります。

専門家総合対策コースに「2段階申請」を導入
専門家総合対策コースでは、申請プロセスが「第1段階(リスクアセスメント)」と「第2段階(対策実施)」の2段階に分かれる仕組みが導入されました。第1段階の交付決定を受けてからリスクアセスメントを実施し、その結果をもとに第2段階の申請を行う流れです。
実務上注意したいのは、第1段階の申請期限が令和8年8月31日に設定されている点です。全体の申請受付は10月31日までですが、専門家総合対策コースを選ぶ場合は2か月前倒しで動く必要があります。第2段階に進むには第1段階の交付決定が必須のため、この期限を逃すとそのまま今年度の申請機会を失います。
なお、熱中症対策コースとコラボヘルスコースは従来通り1段階の申請で完結します。2段階申請の対象は専門家総合対策コースのみ、と整理して覚えておくと混乱しません。
リスクアセスメントは「外部専門家依頼」と「自社実施」の2ルート
専門家総合対策コースのリスクアセスメントには、実は2つのルートがあります。
- ルートA:労働安全衛生コンサルタント等の外部専門家に依頼する(第1段階の補助対象:補助率4/5)
- ルートB:自社の安全衛生担当者(安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者等。事業主が兼任可)が
実施する(第1段階の申請は不要、第2段階から申請)
「専門家への依頼が必須」と誤解されがちですが、自社で実施するルートも明確に認められています。
ただしルートBには重要な要件があります。自社の安全衛生担当者によるリスクアセスメントだけでは不十分で、安全衛生委員会または衛生委員会で職場の安全衛生対策について審議を行い、その議事録や記録を申請書に添付する必要があります。委員会の設置義務がない事業場では、定例会議や業務ミーティング等の場で同等の話し合いを行えば代替可能です。「自社で済ませる=書類が少なくて済む」というイメージで進めると要件を満たせない可能性があるため、注意が必要です。
改正労働安全衛生法による努力義務化
令和8年4月1日施行の改正労働安全衛生法により、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善等が、事業者の努力義務として明文化されました。エイジフレンドリー補助金は、この努力義務に対応するための具体的な手段として位置づけられる制度です。法改正と補助金拡充がセットで動いていることからも、国としての本気度が読み取れます。
3つのコース別|対象設備と補助率
令和8年度の3コースについて、それぞれの特徴を整理します。

熱中症対策コース【令和8年度の注目コース】
令和8年度から新設される熱中症対策コースは、高温環境下での作業や屋外作業において、60歳以上の高年齢労働者の熱中症リスクを低減するための設備や機器の導入費用を支援するコースです。補助率は1/2、上限額は100万円。1段階申請で完結します。
「屋外作業等」の定義についても、公募要領で明確化されました。屋外、または労働安全衛生規則第606条の温湿度調整を行っても室温31℃または湿球黒球温度(WBGT)28℃を超える屋内作業場での作業が対象です。炉があるため空間全体での温湿度調整ができない、といった事情を説明できる必要があります。
対象となる設備の例としては、以下のようなものがあります。
- 体表面の冷却機器(移動式・熱排気可能なスポットクーラー、ミストファンなど)
- 電動ファン付き作業服(体温を下げる機能があるものに限る)
- 効率的に身体冷却を行う機器(アイススラリーや保冷剤を冷やす冷凍ストッカー、400Lまで)
- ウェアラブルデバイスによる健康管理システム
ここで実務上の重要ポイントが複数あります。
まず、WBGT指数計は令和8年度から補助対象外となりました。令和7年度までは「1事業者につき1点まで」対象だったため、過去の情報を見て申請を計画している場合は注意が必要です。
次に、スポットクーラーは「移動式で熱排気できるもの」に限定されています。扇風機、送風機、サーキュレーター、気化式冷風機、水冷式エアコン、大容量スポットクーラーは対象外です。
また、エアコンや空調設備が必ずしも対象になるわけではない点も重要です。「事務所全体の空調改善」のような目的では認められず、あくまで「高年齢労働者の熱中症防止」という目的が明確であることが要件となります。同じ空調工事でも、目的設定の仕方ひとつで対象になるかどうかが変わってくるということです。
さらに、保冷剤やアイススラリーそのもの、首に巻く・当てるタイプの保冷剤、保冷温庫や冷凍冷蔵庫も対象外。「冷凍ストッカー(冷凍専用機)」のみが対象となっています。境界線が分かりにくい領域なので、最新の公募要領とQ&Aで慎重に確認することをおすすめします。
専門家総合対策コース
令和7年度までの「総合対策コース」「職場環境改善コース」「転倒・腰痛予防のための運動指導コース」が一つのコースに整理されました。前述のとおり、第1段階(リスクアセスメント)と第2段階(対策実施)の2段階構造です。
第2段階で補助対象となる取組は、次の5分野に限定されています。
- 転倒・墜落災害防止対策(床改修、手すり設置、高所作業台導入など)
- 重量物取扱いや介護作業における労働災害防止対策(ハンドリフト、パワーアシストスーツ、移乗介助サポート機器など)
- その他の高年齢労働者の労働災害防止対策(業務用車両への踏み間違い防止装置など)
- 転倒防止・腰痛予防のための運動指導
- 専門家による高年齢労働者の特性を踏まえた安全衛生教育の実施
補助率は第1段階が4/5、第2段階が1/2。上限額100万円は第1段階と第2段階の合算上限です。
公募要領にある具体例で考えるとわかりやすいです。リスクアセスメント費用20万円(補助16万円)と、対策実施総額200万円(うち補助対象は1/2の100万円)を組み合わせた場合、本来なら計116万円の補助を受けられる計算ですが、上限100万円が適用されて第1段階16万円+第2段階84万円という配分になります。
なお、製造業の現場でよく検討される機器について、補助対象の範囲が細かく定められている点には注意が必要です。
重量物搬送機器・リフトの分野では、
ハンドリフト、チェーンブロック、つり上げ荷重0.5トン以上のクレーンが対象となる一方、
乗用フォークリフト、テールゲートリフター、自動車整備用リフトは対象外です。
また、工具、生産機器、事務用機器、生産ライン(コンベア含む)は対象になりません。「高年齢労働者の身体機能の低下を補う機器」であることが要件で、「その機器がないと業務ができないもの」は対象外という線引きです。
コラボヘルスコース
健康診断結果を活用した保健指導など、労働者の健康保持・増進に向けた取り組みを支援するコースです。補助率3/4、上限30万円。1段階申請で完結します。
このコースは、他の2コースと異なり年齢要件がありません。役員を除く労災保険適用の労働者(年齢不問)が常時1名以上就労していれば対象です。健康教育・研修、健康管理システム導入(初期費用のみ)、栄養・保健指導などが対象となります。
なお、申請には事業主健診情報が保険者に提供されていることが前提です。「健康スコアリングレポート」や「事業所カルテ」の写しが必要となるため、まだ提供していない場合は事前準備が必要です。
申請対象と要件
エイジフレンドリー補助金の申請対象は、以下の条件を満たす中小企業事業者です。
- 1年以上事業を実施していること
- 労災保険に加入していること
- 業種ごとの中小企業基準を満たすこと(製造業の場合、常時使用する労働者300人以下または資本金3億円以下)
- 役員を除き、自社の労災保険適用の高年齢労働者(60歳以上)が常時1名以上就労していること
(コラボヘルスコースは年齢要件なし)
なお、補助金の交付は1年度につき1回まで。過去に補助を受けた同一の対策や取組については、再度の補助申請はできません(異なる対策・取組であれば申請可能)。複数コースをまとめて申請することもできない点には注意してください。
申請の流れとスケジュール
令和8年度の申請スケジュールは以下のとおりです。
- 申請受付期間:令和8年5月20日〜令和8年10月31日(当日消印有効)
- 専門家総合対策コース第1段階の申請期限:令和8年8月31日
- 支払請求書類受付期限:令和9年1月31日(当日消印有効)
申請方法は、郵送に加えてJグランツによる電子申請も可能です。

申請のサイクルは月次で回ります。熱中症対策コースとコラボヘルスコースの場合、毎月末締切→翌月審査→月末〜翌月上旬に結果連絡という流れ。公募要領のQ&Aには「10月に申請した場合、交付決定通知は12月となる」という具体例も示されており、申請が遅くなるほど対策実施期間が圧迫されます。
ここで特に重要なのが、交付決定前の発注・契約・購入はすべて対象外になるという点です。Q&Aでは「いかなる理由があっても補助対象外」と明記されており、運用は厳格です。「公募開始前に見積もりは取っておきたいが、契約はまだ」という線引きを明確にしておく必要があります。
支払請求の最終期限は令和9年1月31日。申請から逆算すると、おおむね7月〜8月頃が納入開始の現実的なタイミングと考えられます。1月末までに納品と支払いの両方を完了できる設備でなければならない、という制約は意外と見落とされがちです。近年は半導体不足等の影響で、設備によっては想定以上に納期がかかるケースも増えています。スケジュールがタイトな補助金だからこそ、納期確認は早めに進めておきたいところです。
申請前にやっておくべき準備|よくある誤解と落とし穴
ここからは、申請を進めるうえで実務的に注意したいポイントをまとめます。

1.リスクアセスメントの事前検討
専門家総合対策コースを選ぶ場合、外部専門家への依頼か自社実施かを早めに決める必要があります。
外部専門家ルートを選ぶなら、依頼先の確保と第1段階申請の準備を8月31日までに完了させなければなりません。
自社実施ルートを選ぶ場合は、安全衛生委員会等での審議とその議事録の整備が必要です。
厚生労働省が公開している「エイジアクション100」は、職場の危険箇所を洗い出すためのチェックリストとして広く活用されており、両ルートの出発点として有効です。
2.高年齢労働者名簿の整備
60歳以上の従業員の一覧を整備しておくことで、補助金対象要件への適合可否を素早く判断できます。基本的な書類ですが、申請段階で慌てて作成する企業も少なくありません。
3.見積書の事前取得
公募開始前に見積書を取得しておくこと自体は問題ありません。むしろ推奨されます。ただし繰り返しになりますが、交付決定前に契約や発注を進めてしまうと対象外になるため、その線引きには細心の注意を払いましょう。
4.「去年OK」が「今年NG」になるリスク
エイジフレンドリー補助金の補助対象は、直近の労働災害の発生状況や予算等を勘案して年度ごとに見直しが行われます。実際、令和8年度ではWBGT指数計が令和7年度の対象から外れるといった変更がありました。「去年良かったからいいだろう」という前提で動くと、後で対象外と判明して計画変更を余儀なくされるリスクがあります。最新の公募要領とQ&Aを必ず確認するという基本動作が、何よりも大切です。
対象外となる経費の具体例
令和8年度のQ&Aで明示されている対象外経費を整理します。

特に「事務室や作業場のエアコン」「工場扇」「送風機」は、製造現場で熱中症対策として真っ先に思いつく設備ですが、令和8年度も明確に対象外として整理されています。
熱中症対策コースで対象となるのは、あくまで「移動式の熱排気可能なスポットクーラー」や「冷凍ストッカー」など、要件を満たす特定の機器に限られる点に注意が必要です。
まとめ|令和8年度の申請を成功させるために
令和8年度のエイジフレンドリー補助金は、コース再編、専門家総合対策コースへの2段階申請導入、熱中症対策コースの新設など、これまでとは制度設計が大きく変わりました。
特に注目したいのは、新設される熱中症対策コースと、改正労働安全衛生法による努力義務化との連動です。
申請を成功させるために押さえておきたいポイントを整理すると、次のとおりです。
- 公募開始前から準備(リスクアセスメント、見積書取得、書類整備)を進めておく
- 専門家総合対策コースを選ぶなら、第1段階の8月31日期限から逆算する
- 自社実施ルートでは安全衛生委員会等での審議と議事録整備が必要
- 交付決定前の発注・契約は絶対に避ける
- 令和9年1月末までの納品・支払い完了から逆算してスケジュールを組む
- 「目的」と「対象設備」の紐付けを明確にする
- 最新の公募要領とQ&Aを必ず確認する(特に対象設備の細かい要件と対象外項目)
エイジフレンドリー補助金は、要件さえ満たせば基本的に活用できる制度です。60歳以上の従業員が在籍する中小製造業にとっては、検討する価値の大きい制度といえます。
<会社概要>
企業名 : 株式会社補助金ポータル
事業内容 : ポータルサイト事業 / SaaS事業 / コンサルティング事業
本社住所 : 東京都渋谷区東3丁目15-7 ヒューリック恵比寿ビル4F
URL : https://hojyokin-portal.co.jp/
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