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【2025年10月】省エネ補助金「工場事業場型」と「設備単位型」|採択率74%のポイント

2025年度の省エネ投資補助金は、製造業の設備更新を強力に後押しする制度として注目を集めています。
特に「工場事業場型」と「設備単位型」の2つの申請類型があり、どちらを選ぶべきか迷う方も多いのではないでしょうか。

本記事では、2次公募の採択結果を踏まえた最新データをもとに、両類型の違いや採択のポイントを解説します。来年度の申請を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

この記事の目次[非表示]

  1. 省エネ投資補助金とは?一般的な補助金との違い
  2. 工場事業場型と設備単位型、どちらを選ぶべきか
  3. 工場事業場型の詳細と採択事例
  4. 設備単位型の詳細と2次公募の結果分析
  5. 採択率を高める省エネ率計算のコツ
  6. 来年度申請に向けた準備スケジュール
  7. まとめ:自社に最適な申請類型を見極めよう

省エネ投資補助金とは?一般的な補助金との違い

省エネ投資補助金は、省エネ性能の高い設備への更新を支援する制度です。
既存設備を廃棄・売却し、新しい設備に入れ替える際に活用できます。

この補助金には、一般的な補助金とは異なる特徴がいくつかあります。

まず、賃上げ要件が不要という点。多くの補助金では給与総額の増加などが求められますが、省エネ補助金では省エネ性能の高い設備を導入すれば、賃上げの有無は問われません。

また、大企業やそのグループ会社も対象になります。中小企業向けの制度が多い中、この点は大きな特徴といえるでしょう。
省エネ法でS・Aクラスの認定を受けている大企業や、大企業が100%出資するみなし大企業も申請可能です。

さらに注目すべきは、申請から発注までのスピード感です。一般的な補助金では申請から発注許可が下りるまで5ヶ月程度かかることが多いのですが、省エネ補助金は申請から約2ヶ月で採択・発注が可能になります。設備投資のタイミングを逃したくない企業にとって、これは大きなメリットです。

工場事業場型と設備単位型、どちらを選ぶべきか

省エネ投資補助金には「工場事業場型」と「設備単位型」の2つの申請類型があります。どちらを選ぶかは、投資規模や目指す省エネの範囲によって変わってきます。

2つの類型の違いを整理

項目

工場事業場型

設備単位型

対象範囲

工場全体の省エネ

設備単位の省エネ

補助上限

最大15億円

最大1億円

補助率

中小1/2〜2/3、大企業1/3〜1/2

1/3

省エネ要件

工場全体で7〜30%減

設備単位で10%減

対象期間

最大4年

最大1.5年

導入後の報告

5年間のモニタリング

1週間の電力計測のみ

工場事業場型が向いているケース

工場事業場型は、複数台の設備更新自動化ラインの構築など、大規模な投資を計画している場合に適しています。

たとえば、マシニングセンター3台を廃棄して複合加工機1台に集約するような計画や、プレス設備と産業用ロボットを組み合わせた生産ライン全体の更新といったケースです。投資金額が1億円を超えるような場合は、こちらの類型を検討する価値があります。

採択率も70〜94%と高水準で推移しており、工場全体の省エネというハードルをクリアできれば、採択される可能性は十分にあります。

設備単位型が向いているケース

一方、1〜2台程度の設備更新を考えている場合は設備単位型が現実的です。

工場全体で見れば省エネ効果は限定的でも、更新する設備単体で10%以上の省エネが見込めれば申請できます。マシニングセンターや旋盤、レーザー加工機といった生産設備のほか、コンプレッサーや空調などのユーティリティ設備も対象になります。

導入後の報告も1週間の電力計測だけで済むため、事務負担の面でもハードルは低いといえるでしょう。

工場事業場型の詳細と採択事例

工場事業場型は、予算規模約2,000億円という大型の補助金です。
現在も3次公募が行われており、2026年1月中旬が締切となっています。

補助率・補助上限と省エネ要件

補助率は、導入する設備の種類や企業規模によって異なります。

中小企業の場合、一般的な申請で1/2、先進設備(高効率のコージェネやボイラーなど)の導入では2/3が適用されます。今年度から新設された「中小企業投資促進枠」では、省エネ要件が緩和されており、工場全体のエネルギー量を7%削減、またはエネルギー原単位を5%改善できれば申請可能です。

ここで押さえておきたいのが「エネルギー原単位」という考え方。設備更新によって自動化機能が付加され、夜間稼働が可能になるようなケースでは、工場全体のエネルギー使用量は増えることがあります。しかし、生産性が大幅に向上すれば、製品1個あたりのエネルギー量は下がります。このような「増エネだけど原単位は改善」というケースでも申請できるのがポイントです。

採択事例に学ぶ

実際にどのような投資が採択されているのか、具体例を見てみましょう。

  • マシニングセンター+自動搬送装置付き立体倉庫: 投資額2.5億円→補助金1.2億円
  • プレス設備+産業用ロボットによる生産ライン更新: 投資額1.4億円→補助金7,000万円
  • 複合加工機+マシニングセンター+産業用ロボットの自動化ライン: 投資額3億円→補助金1.5億円
  • マシニングセンター3台→複合加工機1台への集約: 投資額1億円→補助金5,000万円

注目すべきは、単なる設備の入れ替えだけでなく、複数設備の集約自動化との組み合わせが採択されている点です。生産性向上とエネルギー原単位の改善を両立させる計画が評価されています。

設備単位型の詳細と2次公募の結果分析

設備単位型は今年度の募集がすでに終了していますが、来年度も類似した内容で実施される見込みです。
基本的な制度概要については前回の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
ここでは、2次公募までの採択結果から見えてきた重要な傾向をお伝えします。

採択率55%→74%に改善した背景

今年度の設備単位型は、昨年度と比べて採択率が大幅に改善しています。

昨年度は約55%だった採択率が、今年度は約74%まで上昇しました。

この変化の背景には2つの要因があります。
1つ目は、申請件数の減少(約20%減)。今年度から「省エネ率10%以上」という要件が新設され、申請のハードルが上がったためです。
2つ目は、予算額の増額(約10%増)。予算が増えた分、採択枠も広がりました。

つまり、省エネ率10%の要件をクリアできれば、採択される可能性は以前より高くなっているということです。
逆に言えば、この要件を満たせるかどうかが申請の分かれ目になります。

採択率を高める省エネ率計算のコツ

設備単位型で求められる「省エネ率10%以上」。
この数字をどう算出するかによって、申請の可否が決まります。

指定計算と独自計算の違い

省エネ率の計算方法には「指定計算」と「独自計算」の2種類があります。

指定計算は、メーカーが補助金事務局に登録した省エネ率をそのまま使う方法です。手続きは簡単ですが、比較対象が「導入予定設備の1台前のモデル」になるため、最新モデル同士の比較となり、高い省エネ率は出にくい傾向があります。

独自計算は、現在使用中の既存設備の電力を実測し、導入予定設備と比較する方法です。電力計測の手間はかかりますが、10年、20年と使ってきた古い設備との比較になるため、大きな省エネ率を示しやすいのが特徴です。

独自計算で省エネ率が大幅に向上した事例

実際の申請支援事例では、計算方法の違いによって省エネ率に大きな差が出ています。

指定計算

独自計算

事例A

4.3%

44%

事例B

6.3%

30%

事例C

28%

68%

事例D

5%

47%

指定計算では10%の要件をクリアできなかった設備でも、独自計算に切り替えることで30〜40%台の省エネ率を実現し、採択に至ったケースが多数あります。

特に10年以上使用している設備からの更新を検討している場合は、独自計算の活用を強くおすすめします。

手間はかかりますが、採択率向上への効果は明らかです。

来年度申請に向けた準備スケジュール

来年度の省エネ補助金は、例年通りであれば4月末に1次締切が設定される見込みです。
「まだ半年ある」と思いがちですが、準備には意外と時間がかかります。

11月から始める設備計画の策定

今から始めておきたいのが、来年度の設備計画の策定です。どの設備を更新するのか、どのメーカーの設備を導入するのか。この選定作業を年内に進めておくと、その後の準備がスムーズになります。

省エネ性能の高いメーカーを選ぶことも採択率向上のポイントです。オークマ、中村留、山崎技研、ブラザーなどは省エネ性能の高い設備が多く、形式によっては指定計算でも高い省エネ率が算出できるものがあります。販売店やメーカーに確認してみるとよいでしょう。

また、複数設備の組み合わせも効果的な戦略です。コンプレッサーは投資金額が比較的低い一方でエネルギー消費量は大きいため、工作機械と組み合わせて申請すると、投資全体の省エネ効果を高めることができます。

省エネ診断・電力測定の活用

独自計算を行う場合は2〜3月頃に既存設備の電力測定を実施する必要があります。

電力計をお持ちでない場合は、外部の支援機関に依頼することも検討してください。

補助金事務局が実施している「省エネ診断」に申し込むのも一つの方法です。公的な省エネ診断を受けていると、申請時の加点要素になります。現在の工場や設備のエネルギー状況を客観的に把握できるメリットもあります。


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まとめ:自社に最適な申請類型を見極めよう

省エネ投資補助金は、賃上げ要件がなく、大企業も活用でき、申請から発注までのスピードも速い。
設備更新を検討している製造業にとって、非常に使いやすい補助金といえます。

「工場事業場型」は複数台の設備更新や自動化ライン構築など、工場全体の省エネを図る大規模投資向け、「設備単位型」は1〜2台の設備更新で、設備単位での省エネを目指す場合に適しています。

いずれの類型でも、省エネ率の計算方法が採択のカギを握ります。
特に設備単位型では、独自計算を活用することで省エネ率を大幅に引き上げ、採択率を高めることができます。

来年度の申請に向けて、今から設備計画の策定を始めてみてはいかがでしょうか。
補助金を活用した設備投資について、ご不明な点があればお気軽にお問い合わせください。

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