
【2025.10月】中小企業新事業進出補助金・成長加速化補助金とは?建物費用が対象の補助金・税制を徹底解説
新しい事業への挑戦や大規模な設備投資を検討する際、「建物の建設費用まで補助金でカバーできないだろうか」と考える経営者は少なくありません。
実は、中小企業向けの補助金で建物費用が対象になる制度は非常に限られており、現在活用できるのはわずか3つの制度のみです。
本記事では、事業再構築補助金の後継制度として注目される「中小企業新事業進出補助金」と、
最大5億円の大型支援が可能な「中小企業成長加速化補助金」を中心に、
大規模投資に活用できる2つの補助金と税制優遇を詳しく解説します。
これら2つの補助金に共通する大きな特徴は、建物の建設・改修費用が対象経費に含まれる点です。
中小企業向けでこうした制度は極めて貴重で、工場の新設・増築や事業拠点の開設を計画している企業にとって見逃せない選択肢となるでしょう。
現在公募中の制度もあり、締切は12月19日に迫っています。
自社に最適な制度を見極め、効果的に活用するためのポイントを押さえていきましょう。
中小企業新事業進出補助金の基本情報
中小企業新事業進出補助金の基本要件は下記の通りです。
項目 | 内容 |
補助対象者 | 企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等 |
補助上限額 | 従業員数20人以下 2,500万円(3,000万円) ※補助下限750万円 |
補助率 | 1/2 |
基本要件 | 中小企業等が、企業の成長・拡大に向けた新規事業(※)への挑戦を行い |
補助事業期間 | 交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内) |
補助対象経費 | 機械装置・システム構築費 、 建物費 、 運搬費 、 技術導入費 、 知的財産権等関連経費 、 |
その他 | ・収益納付は求めません。 |
事業再構築補助金からの変更点と制度の適正化
中小企業新事業進出補助金は、2024年まで実施されていた事業再構築補助金の後継制度として誕生しました。
事業再構築補助金は新型コロナウイルス禍の緊急支援として創設され、当時の社会情勢を色濃く反映した制度設計となっていました。
緊急事態宣言下で多くの事業者が苦境に立たされていた時期に設けられたため、制度としては比較的緩やかな運用がなされ、全体の採択率は約5割に達していたのです。
ところが、時代の変化とともに制度も変わりました。
現在の新事業進出補助金における第1回公募の採択率は約30数パーセント。
一見すると厳しくなったように感じるかもしれませんが、これはむしろ適正化されたと捉えるべきでしょう。
コロナ禍における5〜6割という採択率が例外的だったのであり、約3割という水準は補助金制度として妥当な範囲と言えます。
建物費用が対象になる貴重な制度
注目すべき特徴は、建物の建設・改修費用が対象経費に含まれる点です。
実は、中小企業向けの補助金で建物費用が対象になる制度は極めて限定的で、新事業進出補助金、中小企業成長加速化補助金、大規模成長投資補助金の計3つしか存在しません。
大企業向けの補助金では建物が対象になるケースも珍しくありませんが、中小企業にとってこれほど大きな投資を支援してくれる制度は貴重です。
新しい事業拠点の開設、製造ラインの増設、物流拠点の新設など、建物を伴う事業展開を計画している企業にとって、この制度は見逃せない選択肢となるでしょう。
第2回公募のスケジュールと採択率
現在、第2回公募が実施されており、締切は2025年12月19日です。
第1回の採択率が約30数パーセントであったことを考えると、申請書の質が採択の鍵を握ります。
この補助金では「新市場性」または「高付加価値性」のいずれかで新規性を証明する必要がありますが、世の中に全く知られていない新市場を開拓する「新市場性」の要件を満たすのはあまり現実的ではありません。
そのため、多くの企業は「自社にとって新しい事業であり、高い収益性が見込める」という「高付加価値性」で申請することになります。
この場合、市場自体は既存のものでも構いませんが、他社との差別化や独自のマーケティング戦略、高い収益性をいかに実現するかを具体的に示すことが重要です。
新しい事業への挑戦を支援する制度ですから、単なる設備更新ではなく、明確な新規性や成長性を示すこと。
採択されるためには、なぜその建物や設備が必要なのか、どのように事業を発展させるのかを具体的に説明する必要があります。
例えば、建設業を営む企業が新たに木製家具の製造事業に進出する場合、「家具」という市場自体は既存のものですが、自社にとっては新しい挑戦です。 この場合、地域の木材を活用した高付加価値な製品開発、独自の販路開拓、他社との差別化など、「高付加価値性」の観点での事業の優位性を具体的に示すことが求められます。
新事業進出補助金は、こうした新たな挑戦を行う中小企業にとって、建物費用も含めて申請できる貴重な制度です。
新規事業を検討されている企業は、ぜひ活用を検討してみてください。
なお、さらに大規模な投資を検討している企業には、次にご紹介する「中小企業成長加速化補助金」という制度もあります。
中小企業成長加速化補助金|最大5億円の大型支援制度
成長加速化補助金の制度概要
中小企業成長加速化補助金の基本要件は下記の通りです。
項目 | 内容 |
補助上限額 | 5億円(補助率1/2) |
補助事業期間 | 交付決定日から24か月以内 |
補助対象者 | 売上高100億円を目指す中小企業 |
補助事業の要件 | ①「100億円宣言」を行っていること |
補助対象経費 | 建物費(拠点新設・増築等) 、 機械装置費(器具・備品費含む) 、 ソフトウェア費 、 |
成長加速化補助金は、その規模の大きさで注目を集めている制度です。
補助率は1/2、補助上限額はなんと5億円。
つまり、10億円規模の投資を行う場合、最大で5億円の補助を受けられる可能性があるということです。
この補助金も、新事業進出補助金と同様に、建物の建設・改修費用が対象経費に含まれます。
工場の新設・増築、大規模な事業拠点の開設など、建物を伴う大型投資を検討している企業にとって、非常に有力な選択肢です
この補助金は、ある程度の事業基盤を持ちながらも、さらなる成長のために大規模な投資を必要とする意欲的な中堅企業を主な対象としています。
売上規模でいえば10億円以上100億円未満の企業が想定されており、将来的に売上100億円を目指すという明確な成長ビジョンを持っていることが前提です。
申請要件の詳細チェックリスト
この補助金の申請要件は明確で、以下の4つの条件を満たす必要があります。
まず、100億円宣言を行い、それを社内外に公表すること。
これは単なる努力目標ではなく、本気で売上100億円を目指すという宣言であり、その覚悟を示すものです。
次に、現在の売上が10億円以上100億円未満であること。
売上10億円未満の企業では対象外となりますし、す
でに100億円を超えている企業も対象外です。
そして、最低1億円以上の投資を計画していること。数千万円規模の投資では要件を満たしません。
最後に、賃上げの実施が必須要件となっています。
成長と同時に従業員への還元も求められるのです。
採択企業の特徴から見る「通過する計画」のポイント
採択率は約16%と非常に狭き門ですが、合格した企業には共通する特徴が見られます。
これらの特徴を知ることで、どのような計画が評価されるのかが見えてきます。
合格企業の年平均成長率は26.4%。これは3年半で売上が倍になる計算です。
単なる微増ではなく、極めて野心的な成長計画が求められています。
売上に対する設備投資の比率は平均53%。売上の半分以上を投資に充てるという、大胆な投資計画が評価されているのです。賃上げ率は平均5.9%。これは一般的な賃上げ率を大きく上回る水準で、従業員への積極的な還元姿勢が示されています。
ここで重要なのは、これらの数値はあくまで「採択された企業の平均」であるという点です。
つまり、これ以上の野心的な計画を立てている企業も多く存在するということ。
成長加速化補助金に挑戦するなら、保守的な計画ではなく、本気で大きな成長を目指す姿勢が不可欠と言えるでしょう。
公募スケジュール
第2回公募は、補正予算の成立後、2026年1月頃に開始される見込みです。
全体で合計3回の実施が予定されていますので、今回のタイミングを逃しても次のチャンスがあります。
ただし、大規模な投資計画の立案には時間がかかりますから、早めの準備が肝心です。
補助金申請の実務ポイントと注意事項
「採択=受給」ではない|採択後の手続きを理解する
補助金申請において、多くの方が誤解しているポイントがあります。
それは「採択されたら補助金がもらえる」という考え方です。実際には、採択はあくまでスタート地点に過ぎません。
採択後には、交付申請、実績報告、賃上げの実行と報告など、多くの手続きが待っています。
これらの手続きを適切に行い、定められたルールを守らなければ、補助金は支給されません。
最悪の場合、すでに受け取った補助金の返還を求められることもあるのです。
特に賃上げ要件がある補助金では、約束した賃上げを実行しなければならず、その報告義務も発生します。
計画段階で「できそうだ」と思っても、実際に実行できなければ要件違反となってしまいます。
よくある失敗「補助金の決め打ち」を避ける
申請における典型的な失敗パターンとして、「この設備を買いたいから、この補助金を使おう」と最初から決め打ちしてしまうケースがあります。
実際には、同じ設備投資でも別の補助金の方が適している場合や、そもそも要件を満たしていないケースが多々あります。設備ありきで補助金を選ぶのではなく、自社の事業計画に最適な補助金を選ぶという順序が正しいのです。
また、複数の補助金を比較検討せずに申請してしまい、採択されなかった後で「別の補助金なら通ったかもしれない」と後悔するケースも少なくありません。
このような失敗を避けるためにも、申請前に専門家へ相談し、自社に最適な補助金を選定することが重要です。
まとめ:2つの制度の比較と選び方ガイド
ここまで2つの制度を個別に見てきましたが、自社に最適な制度を選ぶには、それぞれの特徴を比較する必要があります。
この2つの補助金の違いを確認してみましょう
中小企業新事業進出補助金 | 中小企業成長加速化補助金 | |
売り上げ規模 | 制限なし(中小企業要件を満たしていること) | 10億円以上100億円未満 |
投資規模 | 数千万円規模 | 1億円以上 |
補助上限額 | 2,500万円(従業員20人以下の場合) | 5億円 |
100億円宣言 | 不要 | 必須 |
目指す目標 | 新事業への挑戦 | 売上100億円 |
新事業進出補助金は、建物費用が対象になる希少な制度で、新しい事業への挑戦を支援します。
採択率は約30数パーセントで、比較的現実的な水準と言えます。
現在公募中で、締切は12月19日ですので、建物を伴う新事業を検討している企業は、早急に申請の可能性を検討する必要があります。
成長加速化補助金は、最大5億円という大規模な支援が特徴で、建物費用も対象経費に含まれます。
売上10億円以上100億円未満の企業が対象です。
100億円宣言や賃上げが必須で、採択率は約16%と狭き門ですが、野心的な成長計画を持つ企業にとっては魅力的な選択肢です。
次回公募は2026年1月頃の予定ですので、1億円以上の大規模投資を計画しているなら公募に向けた準備を始めましょう。
これらの制度を活用するかどうかで、投資の実現可能性が大きく変わります。
野心的な成長計画と賃上げ計画を立てることが採択への近道です。
最後に、これらの制度を活用する際は、専門家への相談を強くおすすめします。
補助金の制度は複雑で、要件の解釈や申請書の書き方一つで採択率が大きく変わります。
専門家は、自社の事業計画に最適な補助金を提案してくれるだけでなく、採択されやすい申請書の作成もサポートしてくれます。また、採択後の手続きについてもアドバイスを受けられるため、「採択されたのに補助金がもらえなかった」という事態を避けることができます。
大規模投資は企業の将来を左右する重要な判断ですから、万全の準備で臨みましょう。
私たち山善は、製造業における補助金の申請支援の実績が豊富にあります。
補助金を活用したい方、申請手続きにお悩みの方は、ぜひ私たちにお気軽にお問い合わせください。



