
【2025年版】設備投資の税制優遇まとめ|即時償却・税額控除の選び方
設備投資を検討している中小企業にとって、税制優遇制度の活用は経営に大きなインパクトを与えます。
うまく活用すれば、数十万円から数百万円、場合によっては数千万円規模の節税につながることも珍しくありません。
ただし、これらの制度には「事前の認定が必要」「申請のタイミングを間違えると対象外になる」といった注意点があります。
本記事では、中小企業が設備投資で活用できる主な税制優遇制度について、具体的な節税効果や申請時の注意点を交えながら解説します。
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設備投資で活用できる税制優遇制度の概要
中小企業が設備投資で活用できる税制優遇制度には、大きく分けると
- 固定資産税の軽減
- 法人税の即時償却・税額控除
- 法人税の控除(賃上げ関連)
などがあります。
これらの制度の多くは補助金との併用が可能です。たとえば、ものづくり補助金を活用して設備を導入しつつ、税制優遇も受けるといった組み合わせができます。
ただし、税制優遇を受けるためには、設備を取得する前に認定や承認を受ける必要があるケースがほとんどです。
認定までに1ヶ月程度かかることも珍しくないため、設備導入のスケジュールには余裕を持っておくことが重要になります。
先端設備等導入計画|固定資産税を最大5年間1/4に軽減
先端設備等導入計画は、中小企業経営強化法に基づく制度です。労働生産性の向上を図るための計画を策定し、認定を受けることで、導入した設備の固定資産税が軽減されます。
軽減効果と必須要件
この制度を利用するには、賃上げ方針の表明が必須となっています。表明する賃上げ率によって軽減効果が変わります。
1.5%以上の賃上げ方針を表明:固定資産税が3年間1/2に軽減
3%以上の賃上げ方針を表明:固定資産税が5年間1/4に軽減
具体的な金額でイメージしてみましょう。たとえば2,000万円の工作機械を導入した場合、固定資産税は年間約28万円かかります。1.5%の賃上げ表明であれば3年間で約40万円、3%の賃上げ表明であれば5年間で約100万円の節税効果が見込めます。設備投資の規模が大きくなれば、それだけ節税効果も大きくなるわけです。
対象設備の要件
対象となる設備には最低価格が設定されています。機械装置であれば160万円以上、工具・器具であれば30万円以上が条件です。これを下回る設備は、残念ながら本制度の対象外となります。
申請の流れ
申請にあたっては、まず先端設備等導入計画を策定し、認定支援機関に確認を依頼します。確認書が発行されたら、それを添えて申請を行います。認定までには2週間から1ヶ月程度かかるのが一般的です。
なお、固定資産税の軽減を受ける場合は、投資利益率が5%以上となる投資計画の提出も必要になります。
ここが重要:設備取得のタイミング
本制度で特に注意したいのが、設備取得のタイミングです。認定を受ける前に設備を取得してしまうと、優遇措置の対象外になります。「先に設備を買ってから申請すればいい」と考えてしまいがちですが、それではこの制度は使えません。
認定までに30日程度かかることを考慮し、設備導入のスケジュールには十分な余裕を持たせてください。
経営力向上計画|即時償却または10%税額控除を選択
経営力向上計画も中小企業経営強化法に基づく制度です。
人材育成やコスト管理のマネジメント向上、設備投資による生産性向上などを計画し、認定を受けることで税制優遇が受けられます。
2つの選択肢
この制度の特徴は、即時償却と取得価格の10%税額控除(資本金3,000万円超の法人は7%)のいずれかを選べる点にあります。
両者の違いを具体例で見てみましょう。利益2,000万円の企業が1,000万円の設備を導入するケースを想定します(法人税率30%で計算)。
- 即時償却を選択した場合:実際の税額は約300万円に抑えられます。当期の税負担を大きく軽減できるため、即効性を重視する場合に有効です。
- 10%税額控除を選択した場合:実際の税額は約470万円となります。即時償却ほどの即効性はありませんが、長期的に安定した利益が見込める企業にはこちらが適しています。
どちらを選ぶかは申請時に決めるわけではなく、確定申告の際に税理士と相談しながら判断します。
自社の利益状況や今後の見通しを踏まえて選択してください。
A類型とB類型の違い
経営力向上計画の申請には、A類型とB類型があります。違いは、工業会の証明書が発行できるかどうかです。
- A類型:導入する設備について工業会の証明書が発行できる場合に選択します。証明書はメーカーに依頼すれば比較的スムーズに取得できます。
- B類型:工業会の証明書が発行できない設備の場合はこちらで申請します。経産局の確認書が必要となり、この確認書の発行には1ヶ月強かかります。
B類型で申請する場合は、スケジュールに余裕を持った計画が必要です。
申請の流れと注意点
経営力向上計画の認定には約30日かかります。ただし、この制度には先端設備等導入計画にはない特徴があります。
それは、設備取得後でも2ヶ月以内であれば遡及申請が可能という点です。
しかし、ここで注意が必要です。遡及申請ができるのは、事業年度をまたがない場合に限られます。
たとえば、3月決算の企業が2月に設備を取得したとしましょう。「2ヶ月以内だから4月に認定を受ければ大丈夫」と思うかもしれませんが、4月は翌事業年度です。事業年度をまたいでいるため、この場合は対象外となってしまいます。
遡及申請を前提にする場合でも、事業年度末が近い時期の設備取得には十分注意してください。
その他の税制優遇制度
ここからは、特定の条件に該当する企業向けの制度を簡単に紹介します。
賃上げ促進税制|法人税を最大45%控除
賃上げを実施した企業の法人税を軽減する制度です。前年度と比較して給与支給額が増加した場合、その増加額の一部が控除されます。
基本の控除率は、1.5%以上の増加で15%、2.5%以上の増加で30%です。さらに、教育訓練費が前年比5%以上増加している場合は10%上乗せ、くるみん認定を取得している場合は5%上乗せとなり、最大45%の控除が可能です。
この制度は事前の認定が不要で、確定申告時に必要書類を提出して適用を受けます。給与台帳や教育訓練費の請求書、受講記録などを準備しておくとよいでしょう。なお、税額控除の上限は法人税の20%となっています。
地域未来投資促進税制|建物も対象に
地域経済牽引事業計画の承認を受けた企業が対象となる制度です。
建物費が控除対象になるという点が大きな特徴で、新工場の建設などを検討している企業には魅力的な制度といえます。
建物の場合、取得価格の20%を特別償却するか、2%の税額控除を受けるか選択できます。たとえば1億円の新工場を建設した場合、特別償却を選べば約600万円の節税効果が見込めます。
ただし、投資額が1億円以上であること、法人であることが条件となっており、他の税制優遇との併用はできません。手続きも都道府県と経産局の両方への申請が必要となるため、時間に余裕を持った計画が求められます。
再エネ賦課金減免制度|電気代の大幅削減
電気を大量に使用する製造業向けの制度です。年間の電気使用量が100万kWhを超え、一定の条件を満たす企業は、再エネ賦課金が減免されます。
製造業で優良基準を満たした場合、8割もの減免を受けられます。年間100万kWhを使用している企業であれば、約300万円の削減効果が期待できる計算です。
注意点として、申請期間が毎年11月の1ヶ月間に限られています。該当する可能性のある企業は、早めに要件を確認しておくことをおすすめします。
税制優遇制度を活用する際のポイント
最後に、これらの制度を活用する際の実務的なポイントをまとめます。
まず、申請タイミングには余裕を持つことです。認定までに1ヶ月程度かかるケースが多く、書類の不備があれば差し戻しでさらに時間がかかります。設備の納期が決まっている場合は、逆算して早めに動き始めてください。
次に、税理士との連携です。即時償却と税額控除のどちらが有利かは、企業の利益状況や将来の見通しによって変わります。確定申告を見据えて、早い段階から税理士に相談しておくと安心です。
そして、制度間の併用可否の確認も忘れずに。補助金と税制優遇の併用は多くの場合可能ですが、地域未来投資促進税制のように他の税制との併用ができないものもあります。
税制優遇制度は毎年のように内容が見直されることがあります。
申請を検討する際は、各制度の公式サイトで最新情報を確認するようにしてください。
まとめ
設備投資における税制優遇制度は、中小企業の経営に大きなメリットをもたらします。先端設備等導入計画では固定資産税を最大5年間1/4に軽減でき、経営力向上計画では即時償却か10%税額控除を選択できます。
ただし、認定前に設備を取得すると対象外になる、事業年度をまたぐと遡及申請ができないなど、タイミングに関する注意点があります。設備導入を検討する際は、これらの制度を念頭に置きながら、余裕を持ったスケジュールで計画を進めてください。
補助金申請を併せて検討している場合は、加点項目の取得も採択率向上に有効です。
私たち山善では、工作機械や生産設備の導入に関するご相談を承っております。税制優遇制度の活用を見据えた設備選定や、補助金申請のスケジュールに合わせた納期調整など、設備投資を総合的にサポートいたします。
「この設備は税制優遇の対象になるのか」といったご質問も、お気軽にお問い合わせください。


