
【10月度 業界トピック】大型化と知能化で進化する工作機械最新動向
今月の業界トピックからは、製造業における「大型部品加工への対応」と「人手不足を解消するための高精度な自動化・省人化」の流れが一層加速している様子が見えてきます。
工作機械メーカー各社は、熟練の技術を要していた領域を機械の「知能化」や「剛性強化」でカバーし、生産性向上に直結する次世代機を投入しています。
特に、マシニングセンタや複合加工機といった主力製品群において、難加工材への対応力強化や作業者の負担軽減に貢献する機能が注目ポイントです。
私たちと共に、最新の設備動向を確認し、現場の競争力強化につながるヒントを見つけていきましょう。
オークマ、大型マシニングセンタ「MB-100V」を開発
近年、半導体製造装置や建設機械、さらには大型の金型といった多様な産業分野で大物部品の需要がグローバルに拡大しています。しかし、大物部品の加工は、高い精度を安定的に維持するために多くの人手と熟練技術が求められ、特に人手不足や技能伝承の課題が深刻化している製造現場にとって、大きな負担となっていました。
オークマが開発した大型立形マシニングセンタ「MB-100V」は、こうした課題を解決するソリューションとして注目すべき製品です。
この機種は、MB-Vシリーズ史上最大のテーブルサイズ(3000mm×1000mm)を搭載した「スマートマシン」であり、
最大の特長は、加工経験が少ない作業者でも高精度かつ高能率な加工を可能にする点にあります。
同社の「知能化技術」が進化した結果、工場内の環境温度変化に左右されにくい安定的な加工を実現しており、作業者が負担を感じやすい大物部品の段取り、搬入出、切粉処理なども安全かつ簡単に行えるよう配慮されています。
これにより、熟練度の差に依存しない安定した生産体制の確立、ひいては人材の流動化が進む生産現場の生産性向上といった成果が期待できます。
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ヤマザキマザック、複合機のフラッグシップモデル
多品種少量生産の増加や部品の複雑化が進む中で、旋削・ミーリングといった複数の工程を一台に集約できる複合加工機は、生産性の向上に欠かせない設備となっています。
ヤマザキマザックが販売を開始した複合加工機のフラッグシップモデル「INTEGREX i NEO」シリーズは、まさにこの複合加工における「加工能力と精度の最大化」を追求した製品といえます。
この新シリーズは、ミル主軸の構造を最適化し剛性を高めているため、鉄系材料に対しても切込み量を上げて高能率加工が可能です。また、生産性を左右する加工精度の安定化というポイントでは、主軸やボールねじの冷却機能を強化し、熱変位の影響を低減している点が特徴的です。
コールドスタート時や、インターバルを挟む連続加工時でも寸法変化を小さく抑えられるため、高い精度安定性が求められる場面で大きなメリットを発揮するでしょう。
さらに、多品種少量生産に不可欠な段取りの容易化にも注力しており、機械前面から複数の工具を一気に交換できるフロントマガジンや、工具の着脱を簡単に行える脱着装置などが採用されています。
これにより、現場の段取り時間の大幅な削減と自動化時のトラブル防止にも貢献が期待できます。
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牧野フライス製作所、MC2機種を販売開始
牧野フライス製作所は、横形と立形、それぞれのマシニングセンタの最新機種を相次いで市場に投入しました。
この動きは、多様化するモノづくりのニーズに対し、特定の加工要求に特化した高性能な専用機で応えていくという、メーカーの戦略が見える事例です。
特に注目したいのは、5軸制御横形マシニングセンタ「a630iT」が持つ高い自動化適応力です。
難削材や複雑形状のワークに対応しながら、最新制御装置や大容量の工具マガジン(136本)を標準装備し、自動化システムの導入を強力に後押しします。
一方、立形マシニングセンタ「V800」は、近年のトレンドである自動車部品などの金型の大型化に対応するため、Y軸ストロークを大幅に拡大しました。金型加工だけでなく、ミクロンレベルの精度と優れた表面仕上げが要求される精密部品の加工にも向いており、オプションで毎分6万回転の最大主軸速度にも対応可能です。
どちらの機種も、作業性や接近性に配慮した設計となっており、高性能と使いやすさを両立させている点が、現場の生産技術部門の方々にとって大きな導入メリットといえるでしょう。
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まとめ
今月のニュースを振り返ると、工作機械の進化は、単なる高速化・高出力化にとどまらず、「知能化」と「省人化支援」という二つの軸で深く進んでいることが見えてきます。
特に、大物部品加工の分野では、熟練技術者がいなくとも高精度を維持できる技術が導入され、複合加工機においても複合加工機においてもボールねじの温度補正機能が搭載されるなど、安定した品質を誰でも実現するための技術革新が業界のトレンドといえます。
製造業が直面する人手不足や技能伝承の課題に対し、最新の工作機械は、生産性向上だけでなく、作業者の負担軽減と安全性の確保にも貢献するようになってきています。
大型のワークや複雑な加工を効率的かつ高精度に行うための専門性の高い設備(5軸MC、大型VMC、複合機など)を導入することは、他社との競争力を確保するための重要な投資です。
私たちものづくり研究所では、今回ご紹介した工作機械(マシニングセンタ、NC旋盤など)や、鍛圧板金機械(プレスブレーキ、レーザー加工機など)といった主力製品はもちろん、自動化・省人化装置(ロボット、搬送装置)やCAD/CAMソフトウェアなどの周辺機器に関する、より詳細な事例や導入効果を解説しています。
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