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【11月度 業界トピック】製造業DX最前線:AI研削と省スペース自動化

今月のトピックスからは、グローバルな市場の動きの中でも、日本国内の製造業におけるデジタル化と高精度化への取り組みが鮮明に見えてきます。

具体的には、限られたスペースで生産性を最大化する最新の工作機械の登場、熟練が求められる研削加工においてAI技術を活用した「非熟練化」を目指す最先端の取り組み、そして世界的な減速下でも堅調な半導体関連市場の動向という3つの重要な流れをご紹介します。

製造業が直面する人手不足や技術継承、生産効率の課題解決に向けたヒントが詰まった内容といえるでしょう。

この記事の目次[非表示]

  1. ヤマザキマザック、2タレット旋盤
  2. ナガセインテグレックスがAI研削盤開発、研削の非熟練化へ
  3. トルンプ、世界市場減速も国内2桁成長
  4. まとめ

ヤマザキマザック、2タレット旋盤

シャフト部品や小径バーワークの量産加工を担う現場にとって、ヤマザキマザックが発売した2タレット小型旋盤「QRX-50MY SG/50MSY SG」は、生産効率を大幅に向上させる可能性を持つ設備です。
この機械の最大のメリットは、上下タレットによる同時旋削加工や同時ミル加工、そして2主軸仕様では第1・第2主軸での2個同時加工に対応することで、サイクルタイムを大幅に短縮できる点です。
これは、高い生産性が求められる量産加工ラインにおいて、設備投資の回収を早める要因になるでしょう。

もう一つの重要な特徴は、限られた工場スペースを最大限に活用できるという点です。
工場スペースの有効活用は、製造業の経営層にとって常に重要な課題であり、この省スペース設計は大きな魅力といえます。

さらに、旋削主軸と2つのタレットを同一構造体に取り付けることで、熱変位補正がしやすくなり、長時間の量産加工でも加工精度が安定するといった特徴もあります。
バーフィーダーやワークアンローダーなどの自動化システムにも対応しているため、24時間稼働を目指す自動化・省人化ライン構築への貢献度も高いといえます。

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ナガセインテグレックスがAI研削盤開発、研削の非熟練化へ

超精密加工が求められる研削分野において、熟練者の知見をAIで代替・支援し、「非熟練化」を図るというナガセインテグレックスの取り組みは、製造業が直面する技術継承の課題に対する有力な解決策といえます。
展示会MECTで参考出品されたAI研削盤は、人の知見に頼りがちだったシステム構築、加工条件設定、加工中の条件変更をAIが支援する仕組みです。

このAI機能の注目すべき柱は3つあり、
一つ目は、要求精度に基づきマシンや砥石、保持方法、そして加工条件をAIが推奨する「加工システム推奨」。
二つ目は、加工中のセンシングデータに基づき適切な条件補正を提示する「加工条件最適化」。
そして三つ目は、熟練者の思考の流れをオペレーターに教える「熟練者の知見示唆」です。

このようなAI研削盤の導入は、生産性の向上と品質の安定化に直結します。
研削加工は職人の感覚に頼る部分が大きかったため、AIがサポートすることで、若手技術者でも短期間で高品質な加工が可能になることが期待されます。
さらに同社は、業界初という加工中の砥石観察技術「GRIDE EYE」を含めた様々なセンシングデータを元に、研削盤が自ら加工条件を調整し自律的に加工する構想を描いており、自動化・無人化への道筋が示されたといえるでしょう。

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トルンプ、世界市場減速も国内2桁成長

世界情勢の不透明感などによりグローバルの売上は前年度比16%減となったものの、トルンプの日本市場は2桁成長を継続しています。

この成長を特に牽引しているのが、半導体製造装置に組み込まれるプラズマ電源などを手掛けるエレクトロニクス事業です。
事業構成比率は4割程度まで成長しており、「売上規模を5年以内にマシン事業と同程度に高める」目標が目前に迫っています。

一方、主力の板金加工機事業では、為替の影響で価格競争力は難しい状況ながらも成長を続けています。
その差別化ポイントはソフトウェアの機能と信頼性にあるとザムトレーベン社長は説明。
日本の製造業、特に中小企業では機械同士をネットワークで繋ぐスマートファクトリー化に遅れがあると指摘し、ソフトは効果が見えにくいという課題があるため、透明性を高めた提案を進めているとのことです。

単に高性能な機械を導入するだけでなく、ソフトウェアを活用して設備をネットワーク化し、データ連携による生産性向上を図ることが重要といえます。
トルンプの事例が示すように、データの「透明性」を高めることが競争力強化に直結するでしょう。

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まとめ

今月のニュースを振り返ると、2025年11月の製造業界のトレンドは、「デジタル化の深化」「現場の徹底した効率化」という二つの大きな流れに集約されることが見えてきます。
人手不足が深刻化し、技術継承が困難になる中で、製造業の競争力を維持・強化するためには、最新設備の導入とデジタル技術の融合が不可欠です。
ヤマザキマザックの2タレット旋盤のように、省スペースで高い生産性を実現する設備は、既存ラインのボトルネック解消や、コスト効率の高い量産体制の構築に直結します。
また、ナガセインテグレックスのAI研削盤は、超精密加工の現場で最も困難だった「熟練技術の継承」をAIの力で解決するという具体的な方向性を示しており、製造現場の未来を大きく左右する重要な動きといえます。
さらに、トルンプが指摘するネットワーク化の遅れを解消し、AIによる「非熟練化」を工作機械側でサポートする技術を積極的に取り入れることが重要です。
これらのトレンドを活かし、「デジタルな競争力」を身につけていくことが、今後の製造業を勝ち抜くための重要な視点といえます。


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