【独自インタビュー】MSTコーポレーション『自動化の取り組み』について
MSTコーポレーション様(奈良県生駒市)は自社工場で自動化に精力的に取り組まれています。
今回は、東取締役部長様、弓場顧問様に自動化の取り組みについてお尋ねし、大変だったことや効果なども教えて頂きました。また、お客さまに寄りそう温かな気持ちを聞くことができました。
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自動化への取り組みと発展の歴史
40年の自動化の歩み
―――自動化の取り組みについて教えてください 。
ロボットシステムを導入して40年ほど経ちます。
当時の自動化はロボットを使ってワークパレットに積載した素材を工作機械に供給し、加工が終わったものを元のワークパレットに戻すだけでした。
機械を長時間稼働させるには、ロボットだけでなく加工が終わった部品が図面通りの寸法に出来上がっているかの確認も必要です。
2015年に完成した工場では自動化・省人化に力を入れロボット以外にAGV(無人搬送車)を導入、各機械にタッチプローブを装着し機内計測を実施、クーラントの自動供給等、今まで人が介在していたところを自動化・省人化を実現しました。
デジタル化の推進
3年程前からは機械の稼働状況の見える化を目的に各機械にタブレットを装着して【加工開始】、【加工完了】などオペレーターが入力し、大型モニターにて各機械の情報がモニタリングできるように進めています。
各機械の生産状況も生産管理の担当者が現場に行かなくてもPC画面から生産状況が確認できます。製造のデジタル化を推進するに当たって専門部署が出来た事で自動化・省人化・見える化が加速しました。
写真:機械ごとの稼働状況を一目で監視できる大型モニター
自動化の効果と背景
実現された効果
―――効果はありましたか?
以前は各リーダーが頭の中で予定を組み立てていたのが、各作業者の仕事量や進捗状況が一目でわかり、生産性を上げるのに役立っています。
どの機械でどの仕事を何時迄に完成させないといけないのかを、すべての担当者が見ることができます。作業効率を上げたことで、生産量は2割程上がった感覚があります。
自動化のきっかけ
―――自動化のきっかけは何ですか?
私が入社したのは33年前になりますが、当時から自動化の動きがありました。
会社の規模も大きくなり、特に中華圏のお客様からの需要が急増したことで、より生産性を求められるようになりました。
従来のように人手頼みには限界があります。ですので市場の動きに合わせて、ここ数年は特に自動化に注力しています。
課題と解決への取り組み
クーラント自動化の実現
―――苦労した点はありますか?
クーラントの自動化では、各機械に1時間にどのくらいのクーラントを供給すれば良いのか等の地道な実験なども行いました。
機械によって同じ部品を削ってもクーラントの減る量は異なります。各機械の稼働率やクーラントの減る量などを試算し、検証・データ取りに1年くらいかかりました。
写真:クーラント自動供給システム
今後の展望
最終的には社内に250ほどある加工機すべてにタブレットを設置し、加工状況をリアルタイムで集計したり、図面を見たり、加工前に過去のミスの事例を確認したりと社員が情報を共有出来るようにバージョンアップしていきたいと思っています。
また、様々な種類の機械があり、加工工程も多いので、マテハンを合理化すれば、作業効率の改善できるのではないかと考えています。やらなくても良い作業、無駄な時間を減らすことが課題です。
未来の新工場に向けてマテハンの改善に取り組み様々なテストを実施し検証しながら進めて行きたいと思います。
自社製品と顧客への価値提供
スマートグリップによる自動化ソリューション
―――自社製品を使った自動化についても教えてください。
(スリムライン以外に)売上が伸びているのがスマートグリップです。
ワンチャッキングで多面加工ができ、実際社内でも使用して部品加工を行なっています。
メリットとしては、自動運転、自動交換ができることです。工場見学ではお客さんに、スマートグリップを使った自動化をスタートアップとして紹介しています。
スマートグリップの製品情報はこちら
工場見学を通じた知見共有
―――工場見学も積極的に行われていますが、ノウハウを無料で公開されていることになりますよね・・・
お客さんは自動化について関心が高いですが、どうやって自動化を実現すればよいのか分からず、ハードルは高いように思います。
例えば、お客さんから自動化の設備を検討しているが、クーラントの供給をどういう形で決めたのか?と聞かれた場合には、地道にテストしたデータ資料を参考に出すこともあります。
また、お客さんがどこからどこまでやろうと思われているのか、お客さん自身も決めきれていない場合もあり、自動化に踏み切れないケースも多くあります。思われていることを実現するとなると難しい問題もあるので、工場で色々なパターンの自動化があることを見て頂き、実現できそうなことや加工に合うようなものを見ていただければという思いでやっています。工場を見て頂くことでお客さんにとって何かの役に立てばという想いがあります。
おわりに
インタビュー後、私達も工場見学をさせていただき、スマートグリップを取り付けている機械、無人運転しているロボット、AGVが動いている様子や加工状況のモニター等を見させていただきました。
自動化に取り組まれて40年、試行錯誤された経験もあり、実際に様々なメーカーの加工機も使用されているMSTコーポレーション様ですので、皆さまの参考になることも多いのではないかと思います。
このような自動化を検討される方は、ぜひ私たちまでお問い合わせください。
【Profile 】
取材日:2022年9月
社名:株式会社MSTコーポレーション
所在地:〒630-0101 奈良県生駒市高山町1738
創業:1937年
生産品目:マシニングセンタ用ツーリングシステム、複合加工機用ツーリングシステム、治具、
測定器、メンテナンスツール、放電加工機用治具・ツールの開発、製造、販売、及びグラファイト加工
URL:https://www.mst-corp.co.jp/