【2025.3月】大規模成長投資補助金vs中小企業成長加速化補助金|徹底比較と申請ポイント
製造業を中心に大規模な設備投資を検討している企業にとって、大規模成長投資補助金と中小企業成長加速化補助金は重要な制度となります。
どちらも大型の設備投資を支援する制度ですが、対象企業や補助率、要件に違いがあります。
本記事では両補助金の特徴を比較し、自社に適した補助金の選び方から申請のポイントまで解説します。
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大規模投資向け補助金の概要と主な違い
投資規模1億円以上の設備投資を検討されている企業にとって、
大規模成長投資補助金と中小企業成長加速化補助金の2つが主要な選択肢となります。
2つの補助金は似ている制度ですが、実は対象とする企業規模や投資金額、補助率などに重要な違いがあります。
まずは両者の基本情報を整理してみましょう。
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2つの補助金の基本情報
大規模成長投資補助金の概要
大規模成長投資補助金は、単体で従業員2000名以下の企業を対象とした制度です。
上場企業や大企業でも、この条件を満たせば申請可能で、投資下限金額は10億円と高く設定されており、人手不足解消と賃上げが主な目的となっています。
予算総額は3000億円、補助上限額は50億円、補助率は1/3です。つまり、最大150億円の投資に対して50億円の補助金を受けられる計算になります。
全体の採択率は約15%と狭き門ですが、戻ってくる金額は非常に魅力的です。
中小企業成長加速化補助金の概要
一方、中小企業成長加速化補助金は、売上高10億円から90億円の中小企業を対象としています。
この補助金は「売上高100億円を目指す企業」を支援する目的で新設されており、 投資下限金額は1億円と、大規模成長投資補助金よりも手が届きやすい金額設定です。
予算総額は1400億円で、補助上限額は5億円、補助率は1/2となっています。
採択率は公式発表はありませんが、3~4割程度と予想されています。
どちらが自社に適しているか?選択の判断基準
2つの補助金は似ているようで対象が異なります。
自社にどちらが適しているかを判断するためのポイントを見ていきましょう。
売上規模による判断
実務上、両補助金は売上規模によって棲み分けられる傾向があります。
- 売上高100億円以上:大規模成長投資補助金が有利
- 売上高10~90億円:中小企業成長加速化補助金が適している
これは昨年の大規模成長投資補助金採択企業の中央値が売上高166億円だったことからも裏付けられています。
中小企業成長加速化補助金は、その名の通り成長途上の中小企業を支援するもので、売上高100億円を目指す企業が対象です。
投資金額による判断
投資規模によっても選択肢は変わります。
- 投資額10億円以上:大規模成長投資補助金
- 投資額1~10億円:中小企業成長加速化補助金
10億円以上の大規模投資なら大規模成長投資補助金を、それ未満であれば中小企業成長加速化補助金を検討するのが基本です。ただし、投資額が10億円以上でも売上規模が小さい場合は、採択率の観点から中小企業成長加速化補助金の方が現実的かもしれません。
採択率と実現可能性の比較
採択率も重要な判断材料です。採択率とは、申請した企業のうち実際に補助金を獲得できる割合のことです。
- 大規模成長投資補助金:採択率約15%
- 中小企業成長加速化補助金:採択率30~40%(予想)
大規模成長投資補助金は競争率が高く、申請しても採択されない可能性があり、昨年の実績では書類審査通過率が約35%、最終採択率は約15%でした。
一方、中小企業成長加速化補助金は新設された制度ですが、採択率は30~40%程度と予想されており、比較的採択されやすいと考えられます。
大規模成長投資補助金の詳細と申請ポイント
大規模成長投資補助金について、さらに詳しく見ていきましょう。
補助率・補助金額の詳細
補助率は1/3で、補助上限額は50億円です。
下限は特に設けられていませんが、投資金額の下限が10億円なので、最低でも約3.3億円の補助金を受け取ることができます。
実際には、昨年の採択事例を見ると、投資額18億円で補助金6億円を獲得した例もあります。
補助金額の大きさが魅力ですが、その分審査も厳しくなります。
申請要件と賃上げ条件の詳細
大規模成長投資補助金では、人手不足解消と賃上げが重要な目的となっています。
事業完了後、毎年平均5%程度の賃上げが必要です。
具体的には、例えば平均給与500万円の企業なら、3年間で毎年25万円ずつ賃上げする計画が求められます。
この賃上げは大きなハードルですが、人手不足解消のための自動化投資など、賃上げを可能にする計画が評価されます。
対象経費と対象外経費
対象となる主な経費は以下の3つです。対象経費とは、補助金の対象として認められる支出のことです。
- 建物費(工場新設、物流拠点移転など)
- 機械装置費(工作機械、生産設備、自動倉庫など)
- システム構築費(自動化システム開発など)
さらに関連経費として、外注費(製品開発の設計加工など)や専門家経費(特許取得など)も対象となります。
対象外となる主な経費は、人件費、事業以外にも使用できる資産(PC、スマートフォン、公道走行車両など)、ランニングコスト(消耗品費、光熱水費など)、土地の購入費用です。
ただし、車両でもフォークリフトや重機は対象になる場合があったり、土地造成費も対象となるケースもあるため、個別に確認が必要です。
申請・採択スケジュール
2025年度の大規模成長投資補助金のスケジュールは以下の通りです。
- 2025年4月末:1次締め切り
- 5月末:書類審査結果
- 6月上旬:プレゼン審査
- 7月末:2次締め切り(想定)
- 事業完了期限:2027年10月(両方の締め切りに共通)
注意すべきは、1次締め切りと2次締め切りで事業完了期限が変わらない点です。
事業完了期限とは、補助対象となる事業を終了し、支払いまで完了させなければならない最終期限のことです。
2次締め切りを選択すると、実質的な事業実施期間が短くなってしまいます。
そのため、大規模な設備投資を予定している場合は、1次締め切りを目指した方が安全でしょう。
採択事例と成功のポイント
昨年採択された事例を見ると、典型的なケースとして「自動車部品製造業、売上高120億円、従業員数250名の企業が、人手不足対策として自動化を用いた新工場建設に18億円投資し、6億円の補助金を獲得」といった例があります。
採択企業の特徴として、売上高中央値が166億円、従業員数中央値が480名という規模感です。
つまり、中小企業というよりも中堅企業や大企業が多く採択されています。
成功のポイントは、人手不足解消という政策目的に合致した投資計画であることと、地域への波及効果や事業の実現可能性が明確に示されていることです。
単なる設備更新ではなく、自動化による生産性向上といった明確な目的が必要です。
中小企業成長加速化補助金の詳細と申請ポイント
続いて、中小企業成長加速化補助金について詳しく見ていきましょう。
補助率・補助金額の詳細
補助率は1/2で、補助上限額は5億円です。大規模成長投資補助金より補助率が高く、
中小企業にとっては資金負担が少なくて済みます。
投資下限額は1億円なので、最低でも5000万円の補助金を受け取ることが可能です。
例えば、5億円の工場建設投資なら2.5億円の補助金が期待できます。中小企業にとっては大きな支援となるでしょう。
申請要件と賃上げ条件の詳細
中小企業成長加速化補助金では、少なくとも年平均3%程度の賃上げが必要で、大規模成長投資補助金の5%よりは緩やかですが、それでも相応の賃上げ計画が求められます。
例えば平均給与400万円の企業なら、毎年12万円程度の賃上げを計画する必要があります。
この賃上げを可能にするような生産性向上の投資計画であることが重要です。
対象経費と対象外経費
対象経費は大規模成長投資補助金とほぼ同じです。建物費、機械装置費、システム構築費が主な対象で、外注費や専門家経費も対象となります。
対象外経費も同様に、人件費、汎用性の高い資産、ランニングコスト、土地購入費などです。
汎用性の高い資産とは、補助事業だけでなく他の用途にも使用できる資産(パソコンなど)を指します。
土地造成費については、現時点では詳細が公表されていませんので、公募要領の発表を待つ必要があります。
申請・採択スケジュール
中小企業成長加速化補助金の2025年度のスケジュールは以下のように想定されています。
- 2025年5〜6月:1次締め切り
- 8月頃:採択結果
- 2年間で合計3回の公募予定
- 事業完了期限:2027年10月
この補助金は2年間で3回の公募が予定されており、1回目を逃しても次のチャンスがあります。
ただし、事業完了期限は一律2027年10月なので、後の回に申請すると事業実施期間が短くなる点に注意が必要です。
想定される採択事例
まだ新設された制度のため具体的な採択事例はありませんが、想定される採択事例としては「売上高40~50億円の製造業が、新工場建設と三次元測定機や工作機械導入のために5億円投資し、2.5億円の補助金を獲得」といったケースが考えられます。
採択される可能性が高い企業の規模感としては、売上高が数十億円(40~50億円程度)が想定されます。
中小企業成長加速化補助金は、その名の通り「成長加速」が目的なので、すでにある程度の規模があり、さらなる成長を目指す企業が評価されるでしょう。
申請手続きの流れとポイント
両補助金に共通する申請から補助金受取までの流れとポイントを解説します。
申請から補助金受取までの流れ
申請から補助金受取までの基本的な流れは以下の通りです。
- 申請書提出
- 書類審査(約1ヶ月)
- プレゼン審査(一部の補助金)
- 採択
- 交付申請(本見積りと相見積書提出)
- 交付決定
- 発注・事業実施
- 事業完了報告
- 補助金受取
特に重要なのは、採択後の交付申請です。
この段階で発注先が最安であることを示す必要があり、本見積りと相見積書の提出が求められます。
交付決定後に初めて発注が可能になる点に注意してください。
書類審査のポイント
書類審査では、投資計画の具体性と実現可能性が評価されます。特に以下の点が重要です。
- 投資計画が補助金の目的(人手不足解消、賃上げ実現など)に合致していること
- 数値目標が具体的かつ実現可能であること
- 事業スケジュールが妥当であること
- 資金調達計画が明確であること
大規模成長投資補助金の場合、昨年の書類審査通過率は約35%でした。
中小企業成長加速化補助金では、もう少し高い通過率が期待できるでしょう。
プレゼン審査のポイント(大規模成長投資補助金)
大規模成長投資補助金では、書類審査を通過すると2~3週間後にプレゼン審査があります。このプレゼン審査では、以下の5つの審査項目に基づいて評価されます。
-
経営力
- 5~10年後の長期成長ビジョンを明確に示すこと
- 3~5年程度の事業戦略を論理的に説明し、その中での補助事業の位置づけを明確にすること
- 成果目標達成のための管理体制を具体的に説明すること
-
先進性・成長性
- 競合他社と比較した差別化ポイントを明確に示すこと
- 労働生産性の抜本的向上と人手不足改善への取り組みを具体的に説明すること
- 持続的な売上成長が見込める理由を市場分析に基づいて説明すること
-
地域への波及効果
- 賃上げ計画(平均5%以上)の具体性と実現可能性を示すこと
- 従業員1人あたりの給与支給総額増加や雇用増など、地域経済への貢献を数値で示すこと
- 取引先や関連企業への波及効果も含めた説明をすること
-
大規模投資・費用対効果
- 企業規模に見合った適切な投資規模であることを示すこと
- 投資による利益創出の見通しを具体的数値で示し、費用対効果の高さをアピールすること
- 既存事業とのシナジー効果を説明すること
-
実現可能性
- 事業実施体制と最近の財務状況に基づく遂行能力を示すこと
- 中長期的な課題検証と明確な実施スケジュールを提示すること
- 市場ニーズの検証結果を踏まえた説明をすること
プレゼン審査の時間は限られているため、これらのポイントを簡潔かつ説得力をもって説明することが重要です。
特に、長期ビジョンと補助事業の概要については詳しく説明することが求められます。
また、質疑応答では具体的で明確な回答ができるよう、事前準備を入念に行いましょう。
金融機関から計画の妥当性の確認を受け「金融機関による確認書」を提出することで、審査時に加点される可能性もあるため、可能であれば準備しておくことをお勧めします。
申請準備のスケジュール管理
申請準備は締め切りの遅くとも1ヶ月前、できれば2ヶ月前には開始することをお勧めします。
大規模な投資計画の場合、関係部署との調整や外部業者からの見積り取得に時間がかかります。
特に注意したいのは、申請書類の作成には想像以上に時間がかかる点です。
投資計画の詳細、賃上げ計画、収支計画など、多岐にわたる資料を準備する必要があります。
締め切り直前の駆け込み申請は避け、余裕を持ったスケジュール管理を心がけましょう。
よくある質問と対策
最後に、補助金申請に関してよくある質問とその対策について解説します。
リース活用は可能か?
設備導入にリースを活用できるかどうかは、補助金によって異なります。
大規模成長投資補助金ではリースの活用が可能ですが、一方で中小企業成長加速化補助金については、
現時点では詳細が公表されていませんので、公募要領の発表を待つ必要があります。
リースを活用する場合、リース会社と補助事業者(申請企業)との間で特約を締結する必要があるなど、通常のリース契約とは異なる点があります。事前にリース会社と相談しておくことをお勧めします。
納期遅延のリスク対策
補助金の事業完了期限(2027年10月)までに納品が間に合わない場合、原則として補助金の対象外となります。
特に海外からの設備輸入や大規模な建設工事では、納期遅延のリスクを十分に考慮する必要があります。
まず余裕を持ったスケジュール設定が基本として、契約時に納期保証条項を盛り込むことも検討してください。
それでも遅延が生じる場合は、早い段階で補助金事務局に相談することが重要です。
個別の事情によっては柔軟な対応が認められるケースもあります。
土地造成費の取り扱い
工場建設などで土地造成が必要になる場合、その費用が補助対象になるかどうかは重要なポイントです。
大規模成長投資補助金では、土地の購入費用は対象外ですが、造成工事費は補助対象となっています。
一方、中小企業成長加速化補助金と新事業創出補助金については、現時点では詳細が公表されていません。
公募要領の発表を待つ必要がありますが、大規模成長投資補助金と同様の扱いになる可能性があります。
補助金の税務処理と圧縮記帳
補助金は原則として益金(収入)として計上され、課税対象となります。
しかし、固定資産の取得に充てた補助金については「圧縮記帳」が認められており、これにより課税の繰り延べが可能になります。
圧縮記帳とは、補助金で取得した固定資産の帳簿価額を補助金相当額だけ減額する会計処理のことです。
取得した固定資産の帳簿価額を補助金相当額だけ減額(圧縮)することで、
その分の減価償却費が減少し、結果的に補助金相当額が複数年に分散して課税されることになります。
また大規模成長投資補助金以外の補助金については、税制優遇制度との併用も可能です。
こうした制度を組み合わせることで、さらに税負担を軽減できる可能性がありますので、
税理士や専門家に相談し、最適な税務戦略を検討することをお勧めします。
まとめ
今回は「大規模成長投資補助金」と「中小企業成長加速化補助金」について解説しました。
大規模な設備投資を検討している企業にとって、最大50億円もの補助金が得られる大きなチャンスです。
自社の売上規模や投資計画に合わせて、適切な補助金を選択し、具体的な投資計画と賃上げ計画を策定することが採択への近道となります。
この機会を逃さず、ぜひ補助金を活用した効果的な投資をご検討ください。
私たち山善は、製造業における補助金の申請支援の実績が豊富にあります。
補助金を活用したい方、申請手続きにお悩みの方は、ぜひ私たちにお気軽にお問い合わせください。