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【7月度 業界トピック】3Dプリンター新素材から放電加工機急成長まで

今月は、3Dプリンターの新素材から加工機のプログラミング簡素化、さらにはロボットの海外生産強化、そしてワイヤ放電加工機の飛躍的な成長といった多岐にわたるトピックスが見えてきます。
これらはまさに、製造業が直面する課題解決と競争力強化のカギを握る動きといえるでしょう。

この記事の目次[非表示]

  1. ソディック、3Dプリンター向け新素材
  2. 中村留精密工業、複合加工機のNCプログラミング簡単に
  3. 安川電機、米ウィスコンシン州でロボット現地生産
  4. 西部電機、ワイヤ放電加工機が成長急
  5. まとめ

ソディック、3Dプリンター向け新素材

ソディックは、金属3Dプリンター「OPMシリーズ」対応の新素材「HYPER21」の販売を開始しました。
この新素材は、コバルトを含まないマルエージング鋼ベースの粉末材料で、独自の「SRT工法(Stress Relief Technology)」に対応している点が特徴的です。

従来の「SUPERSTAR 21」や「SVM」といった粉末材料は硬度が高く切削性に課題がありましたが、HYPER21は造形後の硬度をHRC40に抑えることで、切削加工性と耐摩耗性、強度特性の優れたバランスを実現しています。
特に複雑な形状や薄肉構造を持つ金型部品の造形において効果を発揮し、仕上げ加工時間の短縮や加工代削減により生産効率向上が期待できます。

さらに注目すべきは、コバルト非含有のため「特定化学物質障害予防規則」などの環境規制や輸出規制の対象外となる点です。これは国際的なビジネス展開において大きなメリットといえます。時効処理によりHRC50以上の高硬度化も可能で、量産対応にも適しているため、多様なニーズに応えられる汎用性の高い新素材として期待できます。

中村留精密工業、複合加工機のNCプログラミング簡単に


中村留精密工業はシンプルで直感的に操作できる対話型NCプログラミングソフト「Protona」を発表しました。このソフトは2スピンドル2タレット複合旋盤「NT-Flex」に標準搭載が開始され、今後搭載機種も順次拡大される予定です。

「Protona」はGコードやMコードといった専門的な知識を覚える必要がなく、一定の図面理解があれば初心者でも簡単にプログラム作成ができるため、熟練工への依存度を減らし、若手オペレーターの早期育成にもつながります。
ガイダンスに従って対話形式でプログラムを作成でき、図とテキストによる解説があるため、専門知識がない方でも安心して操作が可能です。

さらに、作成したプログラムは同じソフト内で加工後の形状やパスを確認できるだけでなく、各系統の加工時間を表示し、ドラッグアンドドロップで工程を入れ替えてタイムバランスを調整する機能も備わっており、プログラム作成の迅速化はもちろん、複合加工における工程設計の複雑さを解消し、生産計画の最適化を支援することが期待できます。

安川電機、米ウィスコンシン州でロボット現地生産


安川電機が米国ウィスコンシン州フランクリン市に生産機能を持つ新キャンパスを設立するというニュースは、グローバルなサプライチェーン戦略と地域に根差した生産体制の重要性を強く示唆しています。
同社は、今後8~10年間で約1億8千万ドル(約260億円)を投資し、新キャンパスには本社、技術開発、トレーニング施設に加え、産業用ロボット(一般向けおよび半導体製造装置向けマニピュレータ)を製造する工場などが含まれます。

米国では、インフレや人件費の高騰を背景に自国生産の強化が進んでおり、生産現場における自動化・省力化への設備投資需要が急速に高まっています。安川電機のこの動きは、まさに需要地での生産・販売を強化することで、変動する市場ニーズに迅速に対応し、顧客への安定供給を確保する狙いがあるといえます。
現地生産の強化は、物流コストの削減やリードタイムの短縮だけでなく、地域経済への貢献、さらには米国市場での競争力強化にもつながり、このような地産地消型の生産体制が、ますます重要になってくることでしょう。

西部電機、ワイヤ放電加工機が成長急


西部電機(精密機械事業部)のワイヤ放電加工機が、リーマンショック直後と比較して年間売上高で7倍もの飛躍を遂げ、前3月期には約150億円を達成したニュースは、超精密加工技術への需要の高まりを明確に示しています。
同社は中期経営計画で、2027年度の売上高170億円(社内では200億円も視野)をワイヤ放電加工機だけで目指しているとのことです。

この急成長の背景には「超精密へのシフト」という戦略があります。同社は以前、業界で2番手、3番手の位置づけでしたが、機械のベース部を共通化しつつ、精密機や超精密機の製作に専念した結果、Mシリーズとして具現化されました。特に長年顧客だった台湾の金型業者からの厳しい精度要求に応える中で鍛えられ、ピッチ精度±1ミクロンを実現する技術力を培った点が大きな強みといえます。

同社のワイヤ放電加工機は、売上の8~9割が中国向けで、半導体、EV、精密コネクタ業界からの注文が止まらない状況です。昨年9月に竣工した新工場では、空調管理や振動対策を徹底し、生産能力を1.5倍に高めています。
特に上位機組立エリアでは室温22℃±0.2℃を実現するなど、超精密加工を支える生産環境へのこだわりが見て取れます。


まとめ

2025年7月の「Mono Que」のニュースからは、製造業が直面する課題に対し、多角的なアプローチで解決策を見出している現状が浮き彫りになってきました。

まず、ソディックの新素材「HYPER21」は、材料開発による加工性の向上と生産効率の最適化、そして環境規制への対応という、現代の製造業に不可欠な要素を示しています。
次に、中村留精密工業の「Protona」は、熟練技術への依存を減らし、誰もが効率的に作業できるようなDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の重要性を私たちに教えてくれます。
そして、安川電機の米国での現地生産は、グローバルな市場変化に対応するための柔軟な生産体制と、サプライチェーンの強靭化が喫緊の課題であることを明確にしています。
さらに、西部電機のワイヤ放電加工機の急成長は、ニッチな分野での「超精密」という付加価値追求が、世界市場でいかに大きな競争力になるかを証明しているといえるでしょう。

これらの動向は、私たちが製造現場で直面する「生産性向上」「品質安定化」「人手不足の解消」「環境対応」「サプライチェーンの最適化」といった様々な課題に対し、最新の設備導入やデジタル技術の活用が不可欠であることを示唆しています。
私たち「ものづくり研究所」は、これらの最新情報を深く掘り下げ、皆様の現場での具体的な課題解決に貢献できるようなソリューションをこれからも提案し続けてまいります。

私たち山善では、製造業における最新動向や技術トレンドについて、メールマガジンを通じて定期的に情報を発信しています。

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