
新事業進出・ものづくり補助金 |2つの枠の違いと採択事例まとめ
設備投資を検討する中小企業がよく比較対象にするのが「新事業進出・ものづくり補助金」です。
この記事では、この補助金がどんな制度で、どんな設備投資が採択されているのかを、実際の事例とあわせて解説します。
※本記事は、株式会社フラッグシップ経営が登壇した
「中小企業省力化投資補助金 解説セミナー」の内容に基づいて作成しています。
この記事の目次[非表示]
- ・新事業進出・ものづくり補助金とは
- ・申請スケジュール
- ・採択事例:旧新事業進出補助金
- ・オーナメント菓子製造業:国産果汁ゼリードールの量産化
- ・機械刃物・製鉄機械部品製造業:6m級長尺摺動レールの内製化
- ・セラミックス・プリント配線基板製造業:光トランシーバー用サブマウント基板
- ・精密金属板金加工・バリ取り機等製造業:半導体装置向け精密切削部品
- ・プラスチック射出成形・日用品雑貨製造業:再生材の環境配慮型医療用ペール
- ・プラスチック射出成形・部品製造業:GFRP製高性能音響部品の量産化
- ・化学・食品プラント向け乾燥装置等製造業:半導体向け超純水製造装置への参入
- ・家具・装備品製造業:高級内装モールディングの特注塗装
- ・各種バルブの開発・製造・メンテナンス業:水素インフラ向け大型超精密バルブ
- ・金属精密加工・バルブ部品等製造業:液化ガス向け大型異形バルブ部品
- ・採択事例:旧ものづくり補助金
- ・プラスチック射出成形加工業:透析機器用樹脂部品の量産体制構築
- ・発泡スチロール製品加工業:ZEH対応型高密度断熱材の高精度加工
- ・アルミ冷間鍛造・プレス加工・金型製作業:次世代エアコン用部品への対応
- ・溶接加工業:ステンレス製圧力容器への対応
- ・産業用機械部品の切削加工業:高難度部品への対応力強化
- ・噴霧制御・衛生環境づくり専門企業:スマート農業分野への展開
- ・段ボールの製造・販売業:全自動化による技術継承問題の解消
- ・配管・製缶製作および配管工事業:完全プレハブ配管施工の実現
- ・設計・試作、精密金属加工業:医薬分野向け高精度加工への参入
- ・表面処理(めっき)加工業:複雑形状・微細部品への対応
- ・まとめ
新事業進出・ものづくり補助金とは
現行の制度は「新事業進出・ものづくり補助金」という名称に一本化されていますが、中身は2つの申請枠に分かれています。ひとつは新事業進出枠で、以前は事業再構築補助金という名前で運用されていた枠です。もうひとつは製品・サービス高付加価値化枠(グローバル枠を含む)で、こちらは以前のものづくり補助金にあたります。
同じ制度の中の枠なので混同されがちですが、支援する投資の性質はまったく異なります。
次回(第1回)の締切は2026年10月30日で、対象設備はリースでの導入も可能です。
新事業進出枠とは
新事業進出枠は「自社にとって新規の製品等で、新たな市場へ進出する事業」を支援する枠です。
中小企業の成長・拡大を通じた生産性向上や賃上げを促すため、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への新規参入にかかる設備投資等を支援します。
補助上限額は従業員規模に応じて次のように設定されています。
従業員規模 | 補助上限額(特例適用時) |
1〜20人 | 2,500万円(3,000万円) |
21〜50人 | 4,000万円(5,000万円) |
51〜100人 | 5,500万円(7,000万円) |
101人以上 | 7,000万円(9,000万円) |
最低補助額は750万円で、補助対象経費には、機械装置やシステム構築費に加えて、専ら補助事業のために使う建物費も含まれます。
革新的新製品・サービス枠とは
自社の技術やノウハウを活かした新しい製品・サービスの開発を支援する枠です。古い設備を新しくするだけの設備更新は対象にならず、設備投資を通じて何を開発し、顧客にどのような新しい価値を提供するのかを示すことが求められます。
従業員規模 | 補助上限額(賃上げ特例適用時) |
1〜5人 | 750万円(850万円) |
6〜20人 | 1,000万円(1,250万円) |
21〜50人 | 1,500万円(2,500万円) |
51人以上 | 2,500万円(3,500万円) |
補助下限額は100万円、補助率は中小企業で1/2、小規模事業者・再生事業者等は2/3です。
グローバル枠とは
海外市場の開拓に向けて、国内の輸出体制を強化する取り組みを支援する枠です。
従来のものづくり補助金のグローバル枠を引き継いでいますが、海外への直接投資は対象外となり、国内投資を通じて輸出力を高める取り組みに特化しています。補助上限額は新事業進出枠と同水準、補助下限額は750万円、補助率は2/3で、建物費も対象経費に含まれます。
3つの枠に共通する基本要件
どの枠でも、付加価値額の年平均成長率+4.0%以上、1人あたり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上とすること、一般事業主行動計画の策定・公表などが基本要件です。賃上げ要件や最低賃金要件は、未達の場合に補助金の返還義務が生じます。カッコ内の上限額は、給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上かつ事業場内最低賃金+50円以上の賃上げ特例を適用した場合のもので、未達の場合は増額分の返還が必要になることがあります。
どの枠を選ぶ?判断のヒント
投資の性質によって、適した枠は変わってきます。既存事業とは異なる新しい市場・顧客層に打って出るなら新事業進出枠、既存の技術を掘り下げて新しい製品・サービスを開発するなら革新的新製品・サービス枠、輸出体制を国内で整えるならグローバル枠、というのがおおまかな判断軸です。
そして、投資の目的が「新市場への挑戦」でも「技術の高度化」でもなく、既存工程の人手不足解消や自動化そのものであれば、省力化投資補助金・一般型のほうが適している可能性があります。制度の狙いが異なるため、投資計画の性質に応じて使い分けることになります。
申請スケジュール
第1回公募は、2026年6月29日に公募が始まり、申請受付が9月30日から、応募締切が10月30日(金)18:00です。
採択発表は2027年1月の予定です。申請は電子申請のみで、GビズIDプライムアカウントの取得が必要です。
採択事例:旧新事業進出補助金
現行制度は第1回公募の採択発表前(2027年1月予定)のため、ここでは、新事業進出枠の前身である旧新事業進出補助金で採択された10件の事例を紹介します。いずれも「既存事業とは異なる新市場・新製品への挑戦」という切り口で見ていくと、投資の狙いがつかみやすくなります。

オーナメント菓子製造業:国産果汁ゼリードールの量産化
経営課題
コロナ禍の外出自粛で百貨店やケーキ店への客足が減り、主力のケーキ用オーナメントの需要が縮小。リスク分散のため、新事業への展開が求められていた。
生産工程の課題
新事業の国産果汁ゼリードールは粘度が高く、既存の成型・充填設備では粘度調整や吐出速度を制御できない。古い設備で試しても充填不足や不良が出て、量産化が物理的に不可能だった。
導入設備
ゼリー用充填機、デジタル技術を用いた自動充填成型システム
効果
高粘度のゼリーでも精密な立体成型が安定して行えるようになった。工程の標準化と省人化が進み、操作がタッチパネルに統一されて経験の浅い従業員でも稼働できる。国産果汁の活用や生産拡大に伴う雇用創出など、地域経済にも波及している。
機械刃物・製鉄機械部品製造業:6m級長尺摺動レールの内製化
経営課題
売上の約8割が鉄鋼メーカー向けで景気に左右されやすく、原材料費高騰の価格転嫁もできず収益性が圧迫されていた。
生産工程の課題
半導体製造装置向けの長尺摺動レールの引き合いがあったが、長尺物に対応できる高精度フライス加工機がなく、
平面度±0.02mmを満たせない。長尺物を均一に熱処理できる焼入炉・焼戻炉もなく、外注も現実的でなかった。
導入設備
門型プレートミル、焼入炉、焼戻炉 など
効果
長尺レールの完全内製化(自社一貫生産)で、外注によるタイムロスや納期遅延を解消。
レールの継ぎ目をなくすことで搬送時の騒音・発熱・摩耗を抑え、交換頻度(ランニングコスト)も低減した。
EV等に不可欠な次世代パワー半導体製造装置の安定供給にも貢献している。
セラミックス・プリント配線基板製造業:光トランシーバー用サブマウント基板
経営課題
既存事業(温度管理向けサーモモジュール基板など)への売上依存度が5割を超えていた。
成長分野である次世代通信・データセンタ向けサブマウント基板の引き合いがあっても、生産能力や専用設備がなかった。
生産工程の課題
サブマウント基板は既存の基板と生産プロセスが根本的に異なる。専用のエッチング装置・蒸着装置・高精度の
検査設備と防塵されたクリーンルームを一新しなければ、主要取引先の生産オファーに応えられなかった。
導入設備
ドライエッチング装置、高真空蒸着装置、レーザ顕微鏡、クリーンルームの施工 など
効果
試作・評価から本生産までの一貫体制を確立。チタン・白金・金などの難エッチング材料で、
パターン幅20ミクロンという緻密な形成技術を獲得し、高品質化と短納期供給を実現した。
精密金属板金加工・バリ取り機等製造業:半導体装置向け精密切削部品
経営課題
主力の自社製品(バリ取り機など)は寿命が長く、買い替え需要が少ない。半導体分野などの精密切削加工の依頼が増えていたが、高精度な切削要求に対応しきれず、検査もノギスやマイクロメータに頼る属人的な作業が発生していた。
生産工程の課題
半導体製造・検査装置向けの切削部品(真空部品等)は、±0.001mm以内の寸法公差や高い真円度など極めて厳しい精度と検査基準が求められる。しかし、高精細な切削の実績も最新の検査設備もなく、顧客ニーズに対応できなかった。
導入設備
立型マシニングセンタ、三次元測定機
効果
精密板金・溶接から精密切削加工・厳格な品質検査までの社内一貫体制を構築。±0.001mm単位の微細加工に対応し、
短納期対応と調達コスト削減を顧客に提供できるようになった。三次元測定機で精緻な寸法測定と検査報告書の発行が
可能になり、品質保証体制も確立。操作性の高さから、若手・経験の浅い従業員の多能工化・省人化も進んでいる。

プラスチック射出成形・日用品雑貨製造業:再生材の環境配慮型医療用ペール
経営課題
主力の自社製品(バリ取り機など)は寿命が長く、買い替え需要が少ない。半導体分野などの精密切削加工の依頼が増えていたが、高精度な切削要求に対応しきれず、検査もノギスやマイクロメータに頼る属人的な作業が発生していた。
生産工程の課題
取引先から、廃棄フィルム由来の再生材を使った環境配慮型医療用ペール(廃棄容器)の量産オファーを受けた。
製造にはハイサイクルかつ精密・安定成形に優れた最新設備が不可欠だが、既存の古い設備では金型開閉・製品取り出し・射出動作が不十分で、歩留まりの安定した高効率な生産ができなかった。
導入設備
電動射出成形機
効果
型開閉速度が15%、射出立ち上がり時間が27%短縮し、高速エジェクタで製品の取り出し時間も大幅に短縮。
処分コストの削減と環境負荷の低減を両立する高密封・高強度の再生材医療用ペールを、
病院や介護施設に安定供給している。若手の新規雇用や工程標準化で、持続的な技術承継も可能になった。
プラスチック射出成形・部品製造業:GFRP製高性能音響部品の量産化
経営課題
国際情勢や関税措置による樹脂材料の高騰、電装部品の調達難で、既存事業の収益基盤が不安定化。
新たな高付加価値分野の量産化によるリスク分散と売上向上が急務だった。
生産工程の課題
GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製の高性能音響部品を求められたが、GFRPは剛性・低共振性が高い反面、成形難易度が非常に高い。既存の生産体制や成形機では、材料水分・金型温度・配合比を精密に制御できず、安定した量産と品質の均一化が困難だった。
導入設備
電動射出成型機、取出ロボット、除湿乾燥機、質量式配合装置 など
効果
自動取出ロボットによる自動化と24時間稼働、マグネットクランプによる金型交換(段取り)の迅速化で、生産効率を最大化。除湿乾燥や温調機などの精密管理で成形ばらつきを抑え、高剛性・低共振のスピーカーカバーを高品質に量産できるようになった。成形プロセスのデータ標準化や多能工化教育も進み、若手育成にもつながっている。
化学・食品プラント向け乾燥装置等製造業:半導体向け超純水製造装置への参入
経営課題
既存市場向けの乾燥・濃縮装置は増産キャパが限界に達し、売上依存リスクが顕在化していた。調達難や仕入高騰を脱するため、国策として市場拡大が著しい半導体製造装置市場への新規参入が不可欠だった。
生産工程の課題
半導体向けの装置では、ステンレス配管の極めて高精度な溶接、樹脂製パイプ(PVDF等)の品質ばらつきのない溶着、配管内部の溶接箇所を証明する詳細な検査写真報告書の提出が求められる。既存の汎用金属加工設備やアナログな検査管理体制では、これを満たせなかった。
導入設備
3DCADソフト・配管設計プログラム、配管自動溶接機、パイプ自動溶接装置、ファイバーレーザー溶接機(2000W)
PVDF溶着機、デジタル傾斜計、三次元測定機 他
効果
3DCADによる緻密な設計と自動溶接機・溶着機の導入で、溶接箇所の品質ばらつきをなくした極小加工を実現。
デジタル傾斜計や内視鏡の組み合わせで、配管勾配のデジタル検査、溶接部内部の写真撮影、
検査証明報告書の提出体制も確立した。最先端の半導体メーカーに高精度な装置を短納期で提供できる。
家具・装備品製造業:高級内装モールディングの特注塗装
経営課題
国際情勢や関税上昇による建材・木材の調達コスト高騰に対し、コスト削減にとどまらず高付加価値市場への転換が課題だった。従来の個人向けオーダー家具の需要が一巡するなか、中長期的な安定収益基盤の獲得も急がれていた。
生産工程の課題
超高級高層マンション向けに、壁面パネルや装飾建材「モールディング」など個別フルオーダーのルーム提供を模索。しかし、顧客が求める高級感のある塗装の内製化、とくに多様な色彩の個別要望にその場で応える特注塗装技術と精密な調色設備が、自社になかった。
導入設備
次世代コンピューター調色システム
効果
顧客の色彩要望に100%応える個別設計(微細な調色と特注塗装)を、短時間・内製で行える体制を構築。
競合のいない極めてニッチな超高級マンション向け市場を独自に開拓できた。塗装内製化によるコスト競争力の強化に加え、SNS等での発信を背景にしたグローバル市場への潜在的な競争力強化、技術継承(平準化)も同時に実現している。
各種バルブの開発・製造・メンテナンス業:水素インフラ向け大型超精密バルブ
経営課題
技術者の高スキルに依存する構造で、若手への技術継承が滞っていた。炭素鋼・ステンレス等の仕入価格高騰で既存事業の収益性も低下傾向にあり、市場成長が確実な水素エネルギーなどクリーンエネルギーインフラ分野への進出が必要だった。
生産工程の課題
水素プラントやFCV(燃料電池車)向けに、極めて気密性が高く、抵抗や摩擦のない大型・超精密バルブの生産オファーを受けた。従来のバルブと異なり、寸法公差±0.005mm以内の厳格な公差と高度な面粗度が求められ、既存の生産体制や設備では要求精度を保証できなかった。
導入設備
横形マシニングセンタ、マシンバイス など
効果
±0.005mm以内の高精度な内製・安定量産体制を確立。難削材・複雑な異形バルブでも高精細な加工が可能になり、
水素サプライチェーン向けに高品質なバルブを短納期で提供できるようになった。
社内の平準化、多能工化、若手への技術承継、新規雇用も大きく促進されている。
金属精密加工・バルブ部品等製造業:液化ガス向け大型異形バルブ部品
経営課題
NC旋盤の精密加工に強いベテランを揃えている一方、治具の製作や主要取引先との価格・技術交渉などを代表が単独で統括する属人的な体制だった。受注増に向けて生産体制の刷新が必要で、高単価・高付加価値な製品を効率よく加工する設備も求められていた。
生産工程の課題
液化ガス分野(超低温・高圧など)向けに、複雑な形状の大型異形バルブ部品の精密加工オファーを受けた。しかし、NC旋盤をベースにした既存ラインだけでは、多様な材質(難削材を含む)や複雑な異形製品を効率的・短納期・高精度で削り出すのが難しく、生産効率に大きなボトルネックがあった。
導入設備
立型マシニングセンタ、ツーリング一式
効果
マシニングセンタを加工工程に組み入れ、極めて高い加工精度と難削材加工力を持つ最新の生産体制を構築。複雑な異形バルブ部品を精密に削り出し、歩留まりの安定化とプログラミング短縮による生産性向上(短納期対応)を実現した。ガスや半導体分野で高まる高精度な受託ニーズに対応でき、新規案件の獲得や事業ポートフォリオの多角化が進んでいる。
採択事例:旧ものづくり補助金
続いて、革新的新製品・サービス枠の前身である旧ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠)で採択された10事例です。こちらは新市場への参入というより、既存の技術を土台にした高度化・標準化が中心になっています。

プラスチック射出成形加工業:透析機器用樹脂部品の量産体制構築
経営課題
主要取引先から、人工透析機器用の樹脂部品について月300万個への生産拡大を要請された。高付加価値製品を月300万個供給できる生産体制がなく、医療分野の品質管理能力・製造ノウハウも不足し、品質の安定性に課題があった。
生産工程の課題
透析機器用部品(血液口・透析口の2種)で、厳格な品質管理要求と納期・安定供給を担保しきれない。成形条件(温度・圧力・時間)の設定・調整がベテラン社員の技能に依存し、若手でも対応できる操作・指導プロセスが未標準化だった。
導入設備
最新鋭の小型全電動射出成形機
効果
月産300万個に対応する高品質・安定供給ラインを確立し、医療機器という成長分野へ本格参入。直感的な操作と手順の標準化で若手も生産に参加でき、多能工化が進んだ。廃棄原材料のリペレット化で低炭素型のビジネスモデルも実現。毎年2名の地元採用と取引先の供給力向上で、地域経済にも波及している。
発泡スチロール製品加工業:ZEH対応型高密度断熱材の高精度加工
経営課題
主要取引先から、需要増が見込まれるZEH対応型の高密度断熱材(XPS)の高精度加工を相談された。要求される寸法公差±0.5mm以下に対応できず、住宅ごとに異なる個別仕様と短納期のニーズにも応えられなかった。
生産工程の課題
XPSはEPSに比べて強度が約2〜5倍で、温度管理・張力補正・加工速度を厳密に制御しないと焦げや溶けが発生する難加工素材。電線の位置合わせや張り具合は熟練者の経験と勘による手作業で、微細な制御が困難だった。
導入設備
自動線張りスライス機
効果
温度・張力・速度の自動制御で、公差±0.5mm以下、不良率5%以下、月産60棟体制を実現。材料メーカーとの直接取引で、仕入から加工・検査までの一貫体制も構築した。建築現場での職人の削り微調整作業の負担軽減、賃上げ還元と地域雇用の推進による成長と分配の好循環にもつながっている。
アルミ冷間鍛造・プレス加工・金型製作業:次世代エアコン用部品への対応
経営課題
次世代環境対応エアコン用の「サイレンサータンク部品」の生産を要請された。
要求される高度な供給能力と厳格な品質管理に対応できず、このままでは機会損失が発生する可能性があった。
生産工程の課題
面押し、側面穴あけ、穴裏面取り、口元穴あけ、口元面取りまで、一連のプレス・切削加工が必要。長時間かつ安定した品質での加工が難しく、工程が複雑なため、品質保証と徹底したコスト管理にも課題があった。
導入設備
オーダーメイド専用加工機
効果
切削・穴あけ・面取りまで自動で一貫加工し、安定供給と生産性の飛躍的な向上を実現。治工具選定や加工条件調整の自社ノウハウと合わせて、生産方式を検証・標準化した。若手や入社間もない社員も即座に生産に参加でき、経営リソースを最適化。地元の若手採用強化と原材料調達量の増加で、地域経済にも貢献している。
溶接加工業:ステンレス製圧力容器への対応
経営課題
安全性強化と老朽化により、鉄製から錆びないステンレス製圧力容器へ需要が移行。対応する生産・検査体制が未整備だった。技術者不足と人材定着のための賃上げが必要な一方で、工程標準化ができず生産性が低く、米国の追加関税による材料コスト高騰も利益を圧迫していた。
生産工程の課題
ステンレスは鉄と歪み方が異なり、高度な歪み制御加工と精密な測定体制が必要。大型容器を作業員2名以上がスケール等で手作業測定するため時間がかかり、作業員ごとの精度ばらつきや温度変化による測定誤差も発生していた。
導入設備
最新鋭溶接機械(電流・速度・ギャップの自動調整、トーチ揺動、電流制御、自動データ記録)、三次元測定機
効果
溶接電流・速度・時間の自動記録で歪みデータを可視化し、制御ノウハウを蓄積。大型容器も1人で高精度に測定でき、検査工程の属人性を排除した。高強度・高品質なステンレス製圧力容器を安定供給し、価格競争に依存しない事業へ。賃上げ(1人あたり給与支給総額の年平均3.052%増)と、新規採用・地域雇用の拡大も実現している。
産業用機械部品の切削加工業:高難度部品への対応力強化
経営課題
輪郭加工や大口径タップ加工など、汎用フライス盤では不可能な高難度部品の依頼が増えていたが対応できず、機会損失が発生。代表が既存設備につきっきりで、新たな仕事を受ける余力もなかった。
生産工程の課題
包装機械部品は過酷な稼働環境に耐える耐久性が必要で、顧客ごとの個別カスタマイズ(単品・極小ロット)で高精度加工が求められる。輪郭形状・大口径タップ加工に未対応で、代表の張り付きが生産性のボトルネックになっていた。
導入設備
CNCフライス盤
効果
高精度なNC加工で、輪郭形状や大口径タップなどの高難度単品加工に迅速に対応。ガイダンス機能による自動運転で張り付き作業を解消し、加工時間の短縮と不良率の低減(5年目の営業利益約677万円が目標)を図る。主要取引先への安定供給体制を確立し、同業他社との相互補完や外注の内製化で、地域の金属加工の「駆け込み寺」を目指している。
噴霧制御・衛生環境づくり専門企業:スマート農業分野への展開
経営課題
人手不足の進展で、現場環境を数値化し遠隔制御する仕組みの需要が拡大。しかし現行のシステムや散布機は衛生分野の特定用途を前提とした構成で、農業など他分野への用途拡張を反映できず、用途展開型の案件獲得に制約があった。
生産工程の課題
中小規模の農業現場は、作物・施設ごとに温湿度や必要散布量が細かく異なる。経験と勘に依存した作業では再現性・精度の確保が難しく、散布ムラや病害が発生。多様な環境変化に対応した最適制御を再現・標準化する基盤が未整備だった。
導入設備
IoT機能搭載型自動散布機(量産機ではなく、現場の作物特性や規模、環境データに応じてロジックを段階的に最適化する)
効果
温湿度・散布履歴・環境変動データを連動させて散布条件を自動補正し、作業者が現場に入らなくても均一で再現性の高い自動散布を実現。機器レンタルとクラウド管理・遠隔支援を融合した「データ活用型モデル」で、初期負担を抑えたスマート農業の導入を可能にした。5年後に付加価値額4,340万円を目標とし、農業所得の安定を通じて地域の雇用と経済循環にも寄与する。
段ボールの製造・販売業:全自動化による技術継承問題の解消
経営課題
連切・断裁加工の手作業による段取り替えに多大な時間を要し、生産性のボトルネックになっていた。
特定の熟練社員への依存度が高く、高齢化・退職による人手不足で技術継承が困難。新規案件の受注機会も逃していた。
生産工程の課題
断裁位置の合わせや給紙を手動で実施。罫線のズレや切断面の傾きなどのヒューマンエラーが避けられず、
調整時間が長期化して、多くのロス品(廃棄)が発生していた。
導入設備
ボックスメイキングマシン
効果
全自動化で、加工時間が1枚あたり5分から1分に短縮。手動調整のデジタル標準化により、若手やパート従業員も即戦力となり、技術継承問題を解消した。超多品種・小ロット・オーダーメイドを即日・翌日輸送で供給でき、食品・農産分野などの新たな規格外段ボール需要を獲得。外注していた多量生産案件の内製化と、女性・高齢者も働きやすい環境整備で、新規雇用も創出している。
配管・製缶製作および配管工事業:完全プレハブ配管施工の実現
経営課題
設備の老朽化・大型化に伴い、図面がない、現況と一致しないなど制限条件の多い改修工事が増加。従来の測定・設計精度では現場調整を前提とした施工にならざるを得ず、工期(設備停止期間)と品質管理のリスクが高く、完全プレハブ配管が実現できていなかった。
生産工程の課題
現場測定と図面作成を巻尺やスケッチ等の手作業に依存し、測定精度や設計判断が担当者の経験・勘に左右される。狭隘部や複雑に入り組んだ配管スペース、裏波溶接部位では手戻りが発生していた。
導入設備
三次元測定機
効果
最大約30m規模の大型・複雑配管を非接触で3Dスキャンし、CADデータへ直接連携。不整合を排除した「完全プレハブ配管施工」を実現し、現場での溶接調整を最小化した。リードタイムは2か月から1か月に短縮され、プラント停止リスクも極小化。感覚で伝承されてきた溶接技術を3D形状データとして可視化・比較・学習でき、若手技術者の早期戦力化と定着も促進している。
設計・試作、精密金属加工業:医薬分野向け高精度加工への参入
経営課題
高精度加工のポテンシャルはあるが、加工精度を定量評価して最適条件を確立する手段がなかった。製品精度の再現性確保と試作段階での技術確立が難しく、医薬分野への本格参入や高付加価値製品の事業化(大手分析機器メーカーへの設計・試作提案)が阻害されていた。
生産工程の課題
従来は、一般的な測定器で確認できる単純形状・平面加工のアルミ部品が中心。新ターゲット(ランプハウス部品、プレート部品)は、0.2mm程度の微細な突起部のR形状、異径穴、1/100mmレベルの穴座標精度が必要で、従来の測定プロセスでは把握できない。加工条件が職人の経験・勘に依存し、試作や再調整が多発していた。
導入設備
三次元測定機、画像測定機
効果
複雑形状、深穴、自由曲面、穴の位置座標、微細Rを非接触・高精度で定量測定し、可視化。「測定→分析→加工条件設定→試作→改善」を短期間で繰り返し、前工程で精度を作り込む製造プロセスへ転換した。主要寸法公差±0.1mm以内、微細R再現率90%以上、再調整不要の再現性を実現し、新型分析機器開発のキーパーツとして安定供給できる。高付加価値製品比率の拡大、地域のものづくりネットワークでの取引拡大、若手雇用の創出にもつながっている。
表面処理(めっき)加工業:複雑形状・微細部品への対応
経営課題
歯車や切削部品など複雑形状・微細部品、合金材料への高品質なめっき相談が増加。既存の電解めっき設備では凹部・細穴・狭隙部にめっきが付きにくく、膜厚ばらつきや未処理部が発生。密着性を確保できず、顧客要求を満たせない機会損失のリスクがあった。
生産工程の課題
電解めっきは電流分布の影響を受けやすく、凹凸のある精密部品に均一な皮膜を形成するのが難しい。鍍金後の細部の膜厚分布や形状精度を正確に把握する測定機がなく、品質評価も一部のベテランの経験と勘に依存していた。
導入設備
デジタルマイクロスコープ
効果
無電解ニッケルめっきと独自の串刃設計・溶液調整により、膜厚均一性±2%以内と高い密着性を実現。防錆に加えて耐摩耗性・耐久性を付加し、部品を長寿命化した。360度スキャンによる幾何公差評価とCAD比較で、品質評価時間を30%短縮、検査工数を20%以上削減。測定・評価手順の標準化で若手も評価業務に従事でき、多能工化が進んでいる。精密部品めっきの受注拡大とニッチ領域への本格参入、高度鍍金の域内対応による地域の技術競争力にも貢献する。
まとめ
新事業進出・ものづくり補助金は、同じ制度の中に「新製品・サービスの開発」「新市場への進出」「輸出体制の強化」という異なる性質の3つの枠を持つのが特徴です。前身の補助金の事例を見ると、新事業進出は業種を超えた新分野参入、ものづくり補助金は既存事業の精度・生産性を一段引き上げる投資が中心になっていることがわかります。
自社の投資が既存工程の省力化に近いのであれば、省力化投資補助金・一般型のほうが要件に合いやすい可能性があります。あわせてこちらの記事もご確認ください。
より詳しい事例の解説は、セミナーのアーカイブ動画でもご覧いただけます。


