フライス盤とは？旋盤との違いや種類を初心者向けにわかりやすく解説

フライス盤とは、刃物を回転させてワークを切削する工作機械です。
切削を行う工作機械には、旋盤やマシニングセンタなどもありますが、加工方法や加工できるものにそれぞれ違いがあります。
この記事では、フライス盤とはどんなものか、初心者向けにわかりやすくご紹介します。旋盤との違いや、マシニングセンタとの違いについてもあわせて確認していきましょう。

フライス盤とは

最初に、フライス盤とはどんなものか見ていきましょう。
フライス盤は、「フライス」と呼ばれる切削工具を回転させてワークを切削する工作機械です。
フライスを交換することで、切削によるさまざまな加工を行うことができます。
主に、平面切削、溝加工、座ぐりなどに使われます。

フライス盤の基本的な構造

フライス盤の基本的な構造を確認しましょう。

• 主軸：切削工具を取り付ける軸
• 主軸頭：主軸や変速機を備えた部分
• コラム：フライス盤を支える柱の部分
• テーブル：ワークを固定して加工する台座
• サドル：テーブルを支える部分
• ニー：テーブルとサドルを支える部分

フライス盤と旋盤・マシニングセンタとの違い

フライス盤と同じように「切削加工」を行う工作機械には、旋盤とマシニングセンタがあります。
この2つの工作機械とフライス盤は、どのような点に違いがあるのでしょうか？
ここでは、フライス盤と、旋盤・マシニングセンタとの違いを見ていきましょう。

フライス盤と旋盤の違い

フライス盤と旋盤の違いは、加工できるワークの形状です。
まず最初に、フライス盤と旋盤の加工方法を確認してみましょう。
フライス盤は、刃物を回転させてワークを削る工作機械です。
ワークは固定されているため、主に平面への加工に使われます。
対して、旋盤は刃物を固定した上で、ワークを回転させ、ワークを削る工作機械です。
ワークを回転させるため、円筒形状のワークに対して丸型の加工を行う際に高い精度を出すことができます。
このような加工方法の違いから、フライス盤は平面形状のワーク、旋盤は円筒形のワークの加工に適しています。

フライス盤とマシニングセンタの違い

フライス盤とマシニングセンタの違いは、NC（数値制御装置）による自動運転と、ATC（自動工具交換装置）による工具の自動交換ができるかどうかの違いです。
フライス盤とマシニングセンタの違いを確認する前に、フライス盤とNCフライス盤の違いから見ていきましょう。
フライス盤は、手動で工具の取り付けや操作を行い、平面を切削します。
NCフライス盤は、NC（数値制御装置）がついているため、自動運転が可能なフライス盤です。
マシニングセンタも同じように平面の切削を行いますが、工具の交換が手動ではありません。
マシニングセンタには、工具の交換を自動で行う「ATC」という装置が付属しています。
フライス盤は手動ですべてを行う必要がありますが、マシニングセンタは工具の交換を自動で行うため、リードタイムが短縮できるメリットがあります。

フライス盤の種類

フライス盤は、主軸の向きや加工方法で種類が分かれています。
ここでは、主なフライス盤の種類を見ていきましょう。

汎用フライス盤

汎用フライス盤は、手動で操作を行うタイプのフライス盤です。
すべてを手動で行うため、NC工作機械と違ってプログラムを組むなどの段取りが少なくてすむのがメリットです。
しかし、手動で加工を行うため、加工精度が作業者に影響されるデメリットがあります。

NCフライス盤

NCフライス盤は、数値制御装置（NC：Numerical Control）が付属したフライス盤です。
加工速度や座標を指示するNCプログラムを組むことで、自動で加工を行うことができます。
NCフライス盤は品質のバラツキを抑え、加工精度を高く保てるメリットがありますが、本体価格が高いため、汎用フライス盤よりコストが高くなることを覚えておきましょう。

立形フライス盤

立形フライス盤は、切削工具を取り付ける主軸が垂直方向のフライス盤です。
汎用フライス盤の中でもっとも多い形状です。
主軸とテーブルの動作方向により、ヒザ形、ラム形、ベッド形の3タイプがあります。

• ヒザ形は、主軸が固定、テーブルが前後左右上下に動きます。
• ラム形は、主軸が前後、テーブルが上下左右に動きます。
• ベッド形は、主軸は上下のみですが、テーブルが前後左右に動きます。

横形フライス盤

横形フライス盤は、工具を取り付ける主軸が水平方向のフライス盤です。
「平フライス」と呼ばれる円形の刃を取り付けて加工します。
板状のワークの側面の面加工は、横形フライス盤にしか加工できません。
また、水平方向で加工するため、切粉が落ちやすいというメリットがあります。

フライス工具の種類

フライス盤は、取り付けるフライス工具によってさまざまな加工が可能です。
どのような加工をしたいのかによって、適切な工具を選びましょう。
ここでは、よく使われるフライス工具の種類を確認します。

正面フライス

正面フライスは、工具の円周上に複数のチップ（刃）がついたフライス工具です。
フェイスミルとも呼ばれ、広い面を削る平面切削に向いています。
複数の刃がついた形状のため、高い精度で加工するには、それぞれの刃の状態や角度のメンテナンスを欠かさないようにしましょう。

平フライス

平フライスは、横型フライス盤に使われるフライス工具です。
プレーンカッターとも呼ばれ、円盤状の工具の外周に刃がついた形状をしています。
平面加工に使われるフライス工具ですが、正面フライスに比べて仕上がりが粗くなるため、精度を求めない粗削り加工に向いています。

エンドミル

エンドミルは、ドリルのような形をした円筒状の工具です。
外周と底面に刃がついているため、垂直方向、水平方向のどちらにも切削加工が可能です。
エンドミルの種類は豊富にあり、加工精度のほか、刃の形状や材質で使い分けられます。

溝フライス

溝フライスはサイドカッターと呼ばれ、円盤状で外周に刃がついているフライス工具です。
円盤状の刃を水平方向に動かすことで、溝加工ができます。
溝加工はエンドミルでも可能ですが、エンドミルより加工スピードが速く、精度も高いため、溝フライスを使うのが一般的です。

フライス盤でできる加工

フライス工具の説明でも加工方法について少し触れましたが、さらにくわしく見ていきましょう。
ここでは、フライス盤でできる加工についてご紹介します。

平面加工

平面加工は、ワークの平面を削る加工方法です。
広い面の平面加工は正面フライスや平フライスのほうが早く進められますが、小さい面はエンドミルでの加工が適しています。

側面加工

側面加工は、ワークの側面を削る加工方法です。
主に、エンドミルを使用します。

段差加工

段差加工は、ワークの正面と側面を同時に削る加工方法です。
正面フライス、平フライス、エンドミルを使用します。
広い面積で浅い段差なら正面フライス、狭い面積で深い段差ならエンドミルといったように、加工したい形状にあわせて使い分けましょう。

溝加工

溝加工は、ワークに溝を掘る加工方法です。
通常の溝加工であればエンドミル、溝フライスを使用します。
キー溝やＴ溝などの特殊な形状の溝加工には、T溝フライスなどの適した専用工具を使いましょう。

穴加工

穴加工は、ボール盤のような穴あけができる加工方法です。
穴加工の数が多い場合や、穴位置の精度が求められる場合は、ボール盤よりも効率良く加工できます。
また、ドリルのほかにエンドミルを使うことで、ドリルよりも径の大きい穴加工を行うことも可能です。
中ぐりバイトを使えば中ぐり加工も可能です。

フライス盤の価格相場

フライス盤の価格相場は、数万円から数百万円程度と幅広くあります。
趣味で使う程度の小型のものなら数万円から、工場で使う本格的なものは数百万円からとなっています。
また、NCフライス盤のような上位機種は数千万円ほどの価格となり、大幅に価格が上がることに注意しましょう。
フライス盤の価格も、ほかの工作機械と同様に公開されていないため、正確な価格を知るにはメーカーにお問い合わせをする必要があります。

まとめ

表：フライス盤の選び方ポイント

フライス盤は、工具の付け替えによってさまざまな切削加工ができます。
高い精度の加工と高品質な表面仕上げができるため、自動車や航空宇宙をはじめとするさまざまな業界で使われていて、私たちの生活になくてはならない工作機械です。フライス盤でできる加工と、加工に適した刃物を選んで、安全に加工を行いましょう。

フライス盤の選び方や加工についてお困りのことがありましたら、ぜひご相談ください。
ご希望の加工イメージと社内のニーズに合わせて、最適な機種をご提案させていただきます。
まずはお気軽にお問い合わせください。