
製造業のコスト削減・効率化完全ガイド|7つのムダの見直しとIoTで進める改善ステップ
製造業の現場で「コスト削減」や「効率化」といった課題に直面している工場長や生産管理責任者の方の悩みやご相談をよく耳にします。この記事では、具体的なコスト削減・効率化の進め方について、製造業が抱える構造的な課題を紐解きながら、わかりやすく解説します。
この記事の目次[非表示]
- ・製造業が抱える慢性的な3つの課題
- ・コスト削減の第一歩は「ムダの可視化」から
- ・現場主導でできるコスト削減・効率化アイデア
- ・製造業コスト削減の進め方!改善を成功に導く5ステップ
- ・ステップ1:現状把握(稼働率・不良率・在庫の見える化)
- ・ステップ2:ムダの洗い出し(7つのムダ「かざふてつどう」で分類)
- ・ステップ3:小さな改善から始める(現場主導)
- ・ステップ4:テクノロジーの活用(IoT・見える化、自動化)
- ・ステップ5:外部支援の活用
- ・よくあるご質問(FAQ)
- ・Q1:工場のコスト削減や効率化を進めたいのですが、何から始めればいいですか?
- ・Q2:IoT導入はかなり高額ですか?
- ・Q3:コスト削減・効率化に向けた改善活動が続かないのが課題です。継続のコツはありますか?
- ・製造業のコスト削減・効率化に向けた改善は「ムダの見直し」から
製造業が抱える慢性的な3つの課題
「なぜ、うちの工場は利益が出にくいんだろう?」
そう感じたことはありませんか?
製造業の現場には、古くから続く、大きな3つの慢性的課題が存在します。
利益が出にくい構造(コスト高・価格競争)
原材料費の高騰やエネルギーコストの上昇は、多くの製造業が直面する共通の悩みです。
またグローバルな市場での激しい価格競争にさらされ、製品の販売価格を簡単に上げられない状況が続いています。
結果として、利益率を確保するためには、社内のコストを徹底的に見直すことが不可欠です。
人手不足と技術継承の課題
少子高齢化が進む日本において、製造業は特に深刻な人手不足に陥っています 。
熟練した技術を持つベテラン作業員の退職が進む一方で、若手の採用や育成が追いつかず、技術やノウハウが継承されずに失われていくケースも少なくありません。
人手不足や技術継承の問題で、生産性が低下したり、品質が安定しなくなったりするリスクが増大しています。
古い設備と非効率なプロセス
高度経済成長期に導入された古い設備を使い続けている工場も少なくありません。
古い設備は、最新の機器に比べてエネルギー効率が悪く、故障のリスクも高まります。
加えて、作業プロセスが標準化されておらず、個人のスキルや経験に依存しており、非効率な部分が多く残っていることも生産性向上の妨げとなっているケースが多く見られます。
コスト削減の第一歩は「ムダの可視化」から
コスト削減や効率化を進めるには、まず自社の現場に潜む「ムダ」を具体的に洗い出し、「ムダの可視化」から始めることが重要な第一歩です。
「かざふてつどう」とは?製造現場の7つのムダ
トヨタ生産方式で知られる「7つのムダ」は、製造業の改善活動における基本の考え方です。「7つのムダ」は語呂合わせで「かざふてつどう」と呼ばれています。
1.加工のムダ(か)
必要以上の精度で加工・検査を行うこと。
顧客が求めていない品質レベルまで製品を作り込んだり、過剰な検査工程を設けたりしていませんか?
本来不要な作業に時間とコストをかけてしまうため、生産性が低下します。さらに、過剰な加工は、エネルギー消費や原材料の無駄にもつながります。
2.在庫のムダ(ざ)
必要以上の在庫を持つこと。
過剰な原材料や仕掛品、完成品を余分に保管していませんか?
在庫を抱えることで、保管スペースの確保や管理コストが増加してしまいます。また、在庫を長期間持つことは、製品の劣化や陳腐化リスクを高め、キャッシュフローを悪化させる原因になる場合もあります。
3.不良・手直しのムダ(ふ)
不良品の発生により、手直しや廃棄に手間がかかっていませんか?
不良品の発生は、原材料の無駄だけでなく、手直し作業にかかる人件費や時間のロスを招きます。また、顧客からの信頼を損なうことにもつながり、信頼回復に時間と手間を費やすことになりかねません。
4.手待ちのムダ(て)
作業する人が次の作業を待っている時間。
設備トラブルや前工程の遅れ、材料不足などが原因で作業が中断することが多く発生していませんか?
作業する人の時間が有効的・効率的に活用されず、生産性が低下します。また、作業する人自身のモチベーション低下につながることも。
5.つくりすぎのムダ(つ)
必要量を超えて製品をつくること。
販売計画や需要予測を無視して、過剰に生産していませんか?
在庫のムダを誘発し、保管コストや管理コストを増大させます。また、次の工程への負荷を不必要に高めてしまいます。
6.動作のムダ(ど)
作業する人の無駄な動き(探す、歩くなど)。
工具や部品の置き場所が定まっておらず、探すのに時間がかかったり、不必要な歩行が発生していませんか?
作業時間が長くなって生産性が低下します。また、作業する人の身体的な負担が増え、ミスを誘発したり、疲労や怪我のリスクを高める可能性があるのです。
7.運搬のムダ(う)
不必要な運搬や移動。
工程間のレイアウトが悪く、製品や部品の移動距離が長くなっていませんか?
運搬作業にかかる時間や人件費が増加します。また、運搬中に製品が破損したり、紛失したりするリスクも高まります。
7つのムダを放置すると、どんな損失が生まれるのか?
7つのムダは、単なる時間のロスだけではありません。
例えば、
「在庫のムダ」は、製品の保管スペースや管理コストを増大させます。
「不良・手直しのムダ」は、原材料費の損失だけでなく、作業時間のロスや品質管理コストの増加につながります 。
7つのムダを放置することは、会社の利益を直接的に圧迫していると認識することが大切です。
現場主導でできるコスト削減・効率化アイデア
専門家や大規模な設備投資に頼らなくても、現場の力で7つのムダを排除できるよう改善し、コスト削減や効率化につなげることができます。
いますぐ取り組めるところから始めましょう。
標準作業・5Sの徹底で「作業のムダ」を排除
まず取り組むべきは「5S」と「標準作業」の徹底です。
- 整理:必要なものと不要なものを分け、不要なものを捨てる
- 整頓:必要なものを誰でもすぐに取り出せるように配置する
- 清掃:職場をきれいに保つ
- 清潔:整理・整頓・清掃を維持する
- しつけ:ルールを守る習慣をつける
5Sを徹底することで、「動作のムダ」(探す、歩く)が減り作業効率が向上します。
また、作業手順を標準化することで、作業する人による品質のばらつきを防ぎ、不良品の発生を抑える、つまり「不良・手直しのムダ」を減らすことができます。
設備の稼働率見直し・ロス削減で「時間のムダ」を減らす
設備がどれだけ稼働しているか、どれくらいのロスが発生しているかを見える化しましょう。
設備の故障や段取り替え、チョコ停(短時間の停止)など、ロスが発生している原因を特定し、改善策を講じることが重要です。
設備の定期的なメンテナンスや、段取り替えの作業手順を見直すことで、稼働率を向上させることができます。
たとえば三和ロボティクス株式会社様では、「日中の作業者による着脱待ち時間が無駄。夜間・休日の稼働も人員確保が困難。」という課題を抱えていました。
この課題に対し、ワーク着脱作業の自動化ができる工作機械を導入することにより、専属作業時間を480分から60分へと削減できました。ワーク着脱作業が大幅に効率化され、生産性の向上を実現できています。
現場スタッフの意識改革と改善提案制度の活用
実は最も重要なのは、現場で働く一人ひとりの意識を変えることです。
ムダを見つけ、改善する活動は、一部の管理職だけでなく、現場スタッフ全員が当事者意識を持って取り組むことで、大きな成果につながります。
改善提案制度を導入し、小さなアイデアでも積極的に評価する仕組みを作ることで、改善活動が継続しやすくなります。
製造業コスト削減の進め方!改善を成功に導く5ステップ
製造現場でまず始められる、7つのムダを減らし、コスト削減・効率化改善につなげるポイントをお話ししてきました。
ここでは、製造工場全体でコスト削減や効率化改善を成功に導く5つのステップを紹介します。
ステップ1:現状把握(稼働率・不良率・在庫の見える化)
まずは、現状を正確に把握することから始めます。
設備の稼働率、製品の不良率、在庫量など、改善の指標となるデータを収集し、見える化します 。漠然とした課題が具体的な数値となって浮き彫りになります。
ステップ2:ムダの洗い出し(7つのムダ「かざふてつどう」で分類)
ステップ1で見えてきた課題をもとに、現場に潜む「7つのムダ(かざふてつどう)」を洗い出します。
この工程では、現場のスタッフと一緒に確認することが大切です。どの工程で、どのようなムダが発生しているかを確認することで、改善の糸口が見つかります。
ステップ3:小さな改善から始める(現場主導)
洗い出したムダをすべて一気に解決するのは困難です。
現場主導でできる小さな改善から着手します。
例えば、「探す」動作をなくすために工具の置き場を工夫したり、清掃時間を設けて職場をきれいにしたり、といったことから始めるのがおすすめです。成功体験を積み重ねることで、改善活動が定着します。(参考:標準作業・5Sの徹底で「作業のムダ」を排除)
他にも、設備管理や図面管理、作業手順書の管理などを同じ仕組みを使うことで、「ここを見ればすぐに分かる」という状態にでき、「動作のムダ」を減らせられます。たとえば、製造現場に特化したクラウドサービス「ゲンバト」を活用することで、「探す」動作をなくし業務効率も上がります。
ステップ4:テクノロジーの活用(IoT・見える化、自動化)
小さな改善を継続的に行う一方で、テクノロジーを活用することで、さらに大きな効果を生み出すことができます。
IoT(Internet of Things)技術の進化により、設備の稼働状況や生産データをリアルタイムで収集・分析することが可能になっています。テクノロジーを活用することで今まで見えなかったムダやボトルネックを特定しやすくなります。
生産ラインの自動化は、人手不足の解消や品質の安定にもつながります。
ステップ5:外部支援の活用
「自社だけで進めるには限界がある」「専門家の知見を借りたい」と感じたら、外部の支援を活用することも検討しましょう。客観的な視点から現場の課題を特定し、最適な改善策を提案してくれます。
製造業に詳しい専門商社やコスト削減を得意とするコンサルベンダーなどに、まずは相談してみるのがおすすめです。
よくあるご質問(FAQ)
Q1:工場のコスト削減や効率化を進めたいのですが、何から始めればいいですか?
まずは「5S」の徹底から始めることをお勧めします。
整理・整頓・清掃といった基本的な活動は、特別な費用をかけずに取り組める上、現場の意識改革にもつながります。
Q2:IoT導入はかなり高額ですか?
一概に高額とは言えません。
近年は、中小企業でも導入しやすい安価なIoTツールやクラウドサービス、課題別に柔軟に対応してくれるコンサルティングサービスも増えています。
とはいえ、製造工程に関わるムダを減らしたい場合には高額となることも考えられます。どの部分からムダを減らしコスト削減をしていくか、を一緒に考え、自社の環境を理解したうえで最適な提案をしてくれる業者選びが大切です。
Q3:コスト削減・効率化に向けた改善活動が続かないのが課題です。継続のコツはありますか?
改善活動を継続する一番のコツは、現場のスタッフを巻き込むことです。
小さな改善でも、成果が出たら全員で共有し、褒め合う文化を作ることで、モチベーションを維持できます。また、改善提案制度を設け、社員のアイデアを積極的に採用することも効果的です。
製造業のコスト削減・効率化に向けた改善は「ムダの見直し」から
製造業のコスト削減や効率化は、すぐに実現できるものではありません。でも、現場に潜む「7つのムダ」を見直し、小さな改善を積み重ねることで必ず成果は現れてきます。
もし「何から始めたらいい?」「ムダがあるのは分かっているけど、コスト削減のためにコストはかけられない」「古い設備と工程にムダがあるのは分かっているが、どこにまず投資するのが最適なのか?」といった疑問をお持ちであれば、ぜひ私たち山善にご相談ください。
まずはお気軽にお問い合わせください。貴社のコスト削減・効率化を、経験豊富な製造専門商社である私たちがサポートいたします。